トップオピニオン社説【社説】日印2プラス2 インドを西側に繋ぎ留めよ

【社説】日印2プラス2 インドを西側に繋ぎ留めよ

日本とインドの外務・防衛閣僚会合(2プラス2)が開かれた。宇宙・サイバー分野での連携や共同訓練の拡大など安全保障分野の関係を強化することを確認し、艦艇搭載用の通信アンテナの日本からインドへの輸出も協議した。また、2008年に署名した「安全保障協力に関する共同宣言」を改定する方針で一致した。

ロシアとも友好を維持

共同宣言は、外務・防衛当局の交流や海上輸送の安全確保など包括的な安保協力関係の構築を打ち出したものだが、海洋進出を強める中国の脅威の高まりに対処すべく、日本としては「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の推進などを盛り込みたい考えだ。

かつて日本の安保政策を語る際、その範囲は「極東」であり、「アジア太平洋」に限られていた。安倍晋三元首相はその「アジア太平洋」と「インド洋」を初めて結び付けた。また「自由と民主主義」という価値観を日本外交に取り込んだ。いずれも画期的な試みであった。

その上で安倍氏はこの二つを併せ、「日本は、太平洋とインド洋……の交わりを、力や威圧と無縁で、自由と、法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにする責任を担っている」(16年8月の第6回アフリカ開発会議)と語り、FOIPの構想を打ち出した。

その中で重要な位置を占めるのがインドだ。インドは世界一の人口と高い経済成長を背景に影響力を増しつつあり、また日本と中東・アフリカを結ぶシーレーン(海上交通路)の中央に位置する戦略的要衝でもある。FOIPはグローバルな戦略構想であり、これを支持した米国によって日米印とオーストラリア4カ国の枠組み「クアッド」へと発展し、今や自由主義陣営の世界戦略となっている。

こうした経緯からも窺(うかが)えるように、日本は日印2国間にとどまらず、日米豪印の連携と協力関係を発展させる大きな役割と責務を負っている。また今年は、インドと日本の外交関係が「特別戦略的グローバルパートナーシップ」に格上げされて10年の節目に当たる。強まる中国の覇権的行動を抑えるため、日本はインドとの戦略的連携をさらに推し進めていく必要がある。

もっとも、戦略的自律を掲げるインドは、ロシアとも友好な関係を維持し、対露制裁に加わらず、ロシアから石油や武器を購入し続けている。またインドは昨年、20カ国・地域(G20)の議長国を務め、新興国グループ「BRICS」や新興・途上国「グローバルサウス」への影響力拡大にも積極的だ。

長期戦略的に関係強化を

このため、インドを西側の一員と位置付けてよいのかとの疑問の声も聞く。だがインドが対露関係を重視するのは、中国の脅威に備える必要があるからだ。ロシアと距離を置くことで、中露の緊密化を加速させることを懸念しているのだ。

そのようなインドの立場も斟酌(しんしゃく)し、日本は米国とも連携しつつ長期戦略的な視点から対印関係を強化し、またクアッドにインドをしっかりと繋(つな)ぎ留め、権威主義勢力に取り込まれぬよう努める必要がある。

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