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【社説】統一ドクトリン 「自由拡張」強調も乏しい手段

15日、ソウルで演説する韓国の尹錫悦大統領(AFP時事)
15日、ソウルで演説する韓国の尹錫悦大統領(AFP時事)

韓国の尹錫悦大統領は、日本統治からの解放日に当たる「光復節」の政府記念行事で「統一ドクトリン」を発表した。2022年の光復節で発表した「大胆な構想」が、核・ミサイル開発中止と非核化を前提とした経済協力を北朝鮮政府に提示したのに対し、今回は自由を前面に出し、政府でなく住民を統一の対象として「自由の拡張」を推進するものとなっている。

北は韓国を「主敵」と規定

これは、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が「祖国統一」の旗を下ろし、韓国を「第1の敵対国」とし、戦争で倒すべき「主敵」と規定したことへの“返答”とも取れる。北朝鮮政府が接触すら応じないのであれば「自由が剥奪され貧困と飢餓に苦しむ北同胞」に働き掛け「自由民主統一のための基盤」をつくろうというものだ。

具体的には「韓国内での自由の価値観と力量の醸成」「北住民の統一に対する熱望促進」「国際支援確保」を進め、このために「南北実務協議体の構成」と「国際社会支持のための国際韓半島フォーラム創設」を提案した。だが、実行するには障害がある。北住民に「自由」を伝える手だてがないのだ。韓国ドラマを視聴したという理由で中学生が30人も公開処刑されたという報道があったのは今年のことだ。

北朝鮮は韓国からの情報流入や、住民がそれに触れることを厳しく統制し、これを犯す者を厳罰に処して見せしめにしている。恐怖で縛り付けられた北住民が南の情報に接しようとするだろうか。韓国の民間団体が北に向けて南の情報を風船で飛ばしたり、韓国軍が軍事境界線で大音量で「放送」したりしているが、尹氏の構想を実現する手段としてはお粗末過ぎる。

国内では保守層の中からも尹氏のリーダーシップに疑問が出ている。「理念先行」「周りの意見を聞かない独断専行」などだ。このドクトリンもどれだけ政権内で検討し練ったものなのか。韓国紙・中央日報は「実現の可能性を念頭に置いた具体的な準備作業に基づくものではなく、理念的な正当性に偏っているという指摘もある」と伝えている。

北朝鮮はいずれ尹氏の構想を「体制を揺さぶる策動」などと批判してくるのは間違いない。北朝鮮北部で先月発生した水害の際には、韓国政府の支援表明を無視。近頃関係を強化しているロシアの支援は同じく断りながらも「必要があれば真っ先にロシアに頼る」と当て付けた。

揺るがぬ日韓関係構築を

一方で今年の光復節行事は“分裂”開催となった。これまでは政府主催行事一つだったが、初めて「光復会」をはじめ民間団体がソウル市内の別会場で集会を持った。光復会は独立運動家の遺族らでつくる団体で、独立記念館の館長にいわゆる“ニューライト”として知られる人物が任命されたことや、尹氏の「親日史観」を厳しく批判。今回の構想にも「吸収統一しようとするものだ」と反発している。

光復節の大統領演説で日本への言及がなかったことも異例だが、韓国内の状況を考慮すると政権が代われば再び関係が冷えることもあり得る。何があっても揺るがない両国関係の構築が考えられなければならない。

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