【社説】パリ五輪閉幕 新時代も選手本位を基本に

17日間の熱戦を終えパリ五輪が閉幕した。心配されたテロ事件もなく成功裏に終わったことを喜びたい。何より、「平和の祭典」に相応(ふさわ)しい、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた選手たちの健闘を称(たた)えたい。

日本は金メダル20個

開幕直前に高速鉄道(TGV)施設への放火があり、ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナ自治区ガザでの戦闘が暗い影を投げ掛けないか懸念された。しかし、セーヌ川での開会式から全体に祝祭的なムードが漂った。

新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で原則無観客で行われた2021年の東京五輪と違い、観客を入れての開催となった。チケット売り上げは史上最多の950万枚超で、応援も盛り上がり、選手を後押しした。選手と観客との交歓も五輪の重要な要素であり、本来の姿であることを改めて認識させられた。

閉会式では国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が「フランスは驚くべき舞台を用意してくれた。新たな時代の大会となった」と評価した。開会式のパフォーマンス、観光名所の競技会場など、フランス色を前面に打ち出すものだった。

「広く開かれた大会」をスローガンにした今大会は、世俗主義的ヒューマニズムが色濃くにじみ出た。開会式では、ローマ教皇庁など宗教界から批判される宗教への侮辱的パフォーマンスもあった。フランスには「世俗主義という宗教」が巣くっていることを改めて世界に示したとも言える。

バッハ会長が言うように、今大会がかつてなくユニークで、新しい時代を開いたことは確かである。一方、セーヌ川では水質基準が満たされないままにトライアスロンや遠泳の競技が行われた。選手本位という五輪の基本が置き去りにされた形だ。今後、開催国の工夫でさまざまな形の五輪が開かれると思われるが、選手の安全と公正さを守ることを忘れてはならない。

今回海外開催五輪では最多の409選手で臨んだ日本は、米国、中国に次ぐ金メダル20個を獲得した。銀12、銅13を合わせたメダル総数でも海外開催最多の素晴らしい成績を収めた。メダル獲得に至る戦いぶりは、多くの日本人に感動を与えてくれた。獲得には至らなかった選手も、その奮闘は心に残るものが多くあった。

今大会で新しい競技種目となったブレイキンでは湯浅亜実選手が金メダルを獲得した。新競技へのチャレンジ精神は勇気を与えてくれる。

古くからの競技で日本選手が初めてメダルを獲得する快挙も多く見られた。近代五種男子で銀メダルを獲得した佐藤大宗選手、陸上女子やり投げで金メダルの北口榛花選手、男子高飛び込み銀の玉井陸斗選手ら若い選手が新しい世界を切り開いているのは頼もしい限りだ。

チームワークと和の心で

フェンシング、体操、柔道などでは個人戦と共に団体戦で強さを発揮するのも日本の特長だった。チームワークと和の心で、個人戦以上の力を発揮する場面も見られた。

家族やコーチとの繋(つな)がりなど絆を力とする日本の戦いをこれからも続けていきたい。

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