【社説】人口減少 少子化加速に強い危機感を

総務省公表の住民基本台帳に基づく2024年1月1日現在の日本人の総人口は、前年比86万1237人(0・70%)減の1億2156万1801人で、減少幅は過去最大となった。

東京一極集中の動き再び

人口が1年間で100万人近く減少したことに、私たちは強い危機感を持って対処する必要がある。年100万人減が10年続けば1000万人が減ることになる。こうした状況になれば、高齢者を支える現役世代の負担が増え、社会保障制度の維持は困難になる。安全保障に関しても、装備のハイテク化が進んでいるとはいえ、マンパワーの重要性に変わりはない。人口減少は日本の安全にも影響を与えかねない。

減少の大きな原因は深刻な少子化である。23年の日本人出生者数は過去最少の72万9367人だった。22年以降は年間出生数が80万人を割り込んでいる。国立社会保障・人口問題研究所は17年、80万人を下回る時期を33年と見込んだが、想定より大幅に早まった。

都道府県別に見ると、東京は前年比3933人(0・03%)増と3年ぶりに微増に転じる一方、46道府県では減少が続いた。東京の人口増は、コロナ禍によって郊外などへ転出した流れの反動とみられ、東京一極集中の動きが再び加速しつつある。このことが一層の少子化を招かないか懸念される。

厚生労働省が6月に発表した23年の人口動態統計によれば、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数を示す合計特殊出生率は1・20で過去最低を更新。東京は0・99で、全国で初めて1を割り込んだ。これは、多くの独身女性が就学・就職を機に東京に流入したことで数値が下がったという側面もある。それでも、1を切ったことは深刻に受け止めなければならない。

東京の課題は未婚率が高いことだ。25~49歳では45%を超え、全国平均よりも高い。未婚率上昇は少子化の要因となる。未婚率が増えているのは、結婚よりも独身を選ぶ人が増えたことや、男女間の経済的格差が小さくなったことなどが挙げられるが、東京などの大都市では特にこうした傾向が強いと言える。東京一極集中を打破するには、首都機能移転はもちろん、企業に東京の本社機能を地方に移すよう促す政策の強化も必要だ。

さらに結婚を希望していても経済的な事情で踏み切れずにいる人たちには、結婚助成金の大幅拡充や公営住宅の格安賃貸などの支援策も求められよう。その上で、結婚や育児の素晴らしさを官民挙げて伝えていくことも大切だ。

「人口省」の創設検討を

民間の有識者らでつくる「人口戦略会議」は1月、2100年の「人口8000万人国家」を提唱した。この目標を達成するには、人口政策を担う「人口省」の創設を検討すべきだ。

一方、外国人住民は前年比32万9535人(11・01%)増の332万3374人で、外国人の集計を始めた13年以降で初めて300万人を超えた。日本で働きたい外国人の受け入れ体制を整えることは必要だが、人口減少対策で移民増加を打ち出すことは慎重にすべきだ。

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