【社説】全国学力テスト 一喜一憂せず読解力の向上を

文部科学省は、4月に行われた2024年度の全国学力・学習状況調査(学力テスト)の結果を公表した。国公私立の小学6年生約96万人と中学3年生約90万人を対象に実施した。

中学国語の平均正答率が58・4%で前年度の70・1%から10ポイント余り下がったとして文科省は「必要な情報を取り出したり目的に応じた表現の効果を考えて説明したりすることに課題が見られた」と分析している。

社会に出て生涯必要な力

国語と算数・数学の2教科が行われた今年度のテストの平均正答率は中3国語を除いてほぼ横ばいか若干上昇している。中3国語は、知識と情報の活用を重視する出題形式に変更された平成31年度以来、最低となった。

特に、読む力を問う問題の正答率は48・3%と5割に届かない状況だ。文科省は「年度によって出題傾向が変わったり、難易度が違ったりするので単純に比較できない」「無解答率が少しずつ下がっており、現状の授業が浸透していけば思考力・判断力・表現力が高まり正答率が向上していく」としている。

「読む」は頭にインプットすること。「書く」はアウトプットすること。両方とも必要であり、休憩や睡眠を取ることで記憶が定着すると言われる。

文科省などが推進するGIGAスクール構想は学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学び」の“完成型”とも言える「個別最適な学び」「協働的な学び」を推進するものであろう。情報通信技術(ICT)端末がほぼすべての児童・生徒に配布された昨今、教室で先生が板書して生徒がノートに写し、ペーパー試験で点数を競うという学びの姿も変わりつつあり、インプット、アウトプットの形も変容してくるであろう。

新聞各紙を見ると、文科省や教育委員会、学校に対し、子供たちが読書と作文を通して活字に触れる機会を増やし、急いで基礎を固めるよう求めている。読解力は教科を超えてすべての学力の根本であり、子供たちが社会に出て生涯必要となる力でもある。

しかし、学校だけで子供たちがそうした力を蓄えていくことができるだろうか。修学前の幼少期から、親が「読み聞かせ」する機会を持ち、物語を聞いたり、読んだりしてワクワクする環境が無ければ、子供もなかなか読書を習慣化できるものではない。学校に頼るだけでなく、家庭での読書習慣が読解力の基となる。就寝前のわずかな時間でも続けていくことが大切である。テスト結果に一喜一憂することなく、長い目で読書習慣を育みたい。

スマホマナーの指導も

学習状況調査によれば、SNS・動画を見る時間が長いほど正答率が低くなる傾向がある。スマートフォンやパソコン、タブレット端末などで長時間ゲームをしたり、動画を見たりすると、学習時間がなくなるだけでなく、寝不足になるなど健康上良くないことも多くなる。

学校と家庭がタッグを組み、生活に支障のない機器の使い方を指導することも必要になってきている。夏休みの期間は、スマホマナー、読書習慣について親子で話し合うよい機会だ。

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