日米両政府が、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開いた。自衛隊と米軍の連携を強化し、抑止力向上につなげたい。
拡大抑止の会合を初開催
共同発表文書は、在日米軍について、インド太平洋軍司令官の下で「統合軍司令部として再構成する」と明記。米側は在日米軍に指揮・作戦立案などの部隊運用権限を付与する方針を表明した。
統合軍司令部は、陸海空3自衛隊を一元指揮するため、今年度末に創設される日本の「統合作戦司令部」の「重要なカウンターパート」と位置付けた。日米は双方の体制整備に向け、作業部会設置で一致。中国の軍備増強などを踏まえ、自衛隊と米軍の抑止力・対処力の向上を図るためのものだ。
文書は中国について「他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序を作り変えようとしている」と非難。東シナ海で現状変更の試みを図っていると指摘し、米側は日米安全保障条約第5条が沖縄県・尖閣諸島に適用されることを重ねて確認した。このことは中国への牽制(けんせい)にはなろう。ただ覇権主義的な動きを強める中国に対処するには、日米同盟を強化するとともに日本が防衛力を高め同盟における役割分担を拡大していくことが欠かせない。
防衛省は、航空自衛隊が保有する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を米軍に約30億円で売却する契約を締結した。ウクライナへの軍事援助で減少した米国の備蓄を補うのが狙いだ。昨年12月に防衛装備移転三原則の運用指針を緩和した後、国内製造する外国ライセンスの防衛装備完成品の移転は初めてで、同盟強化に向けた意義は大きい。2プラス2ではPAC3を共同生産する方針も確認した。
基本的に武器の輸出を禁じてきた武器輸出三原則に対し、防衛装備移転三原則は輸出を認めている。とはいえ、依然として制約は多い。もっと柔軟な運用で米国や同志国との連携を深め、民主主義陣営の安全保障に貢献すべきだ。
今回は拡大抑止に関する閣僚会合も初めて開催された。核戦力を増強する中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮などの脅威を踏まえ、拡大抑止強化のため最善の方法を探求することを申し合わせた。
日本は核抑止に関して米国の「核の傘」に依存する状況が続いている。安倍晋三元首相は生前、ロシアによるウクライナ侵略を受け、米国の核兵器を受け入れ、核抑止力を共有することについて議論する必要性を指摘した。核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則の「持ち込ませず」は見直すべきではないか。
不信招く不祥事猛省を
海上自衛隊の「潜水手当」不正受給を巡っては、昨年11月に4人が逮捕されたことが公表されず、木原稔防衛相への報告もなかった。
不信を招くような不祥事を猛省し、組織改革を断行しなければ、米軍との連携強化もおぼつかない。防衛政策も国民の信頼の上に成り立っていることを防衛省・自衛隊は肝に銘じる必要がある。