日銀が政策金利である短期金利の誘導目標を0・25%程度に引き上げた。
利上げは、3月のマイナス金利政策の解除に続いて今年2回目である。同時に決めた国債買い入れ額の段階的縮小と併せ、金融政策の正常化が一段と進むことになる。
決定受け円相場が急騰
歴史的な円安による物価高が消費低迷を招いているだけに、今回の追加利上げは円高への流れを方向付ける円安・物価高対応として大いに評価したい。引き続き金利や為替動向などに目を配りながら、金融正常化を丁寧に進めていってもらいたい。
植田和男総裁は決定会合後の記者会見で利上げを決めた理由について、物価動向が2%目標の持続的・安定的な実現に向け想定通りに推移していることを挙げたが、円安もあって輸入物価が再び上昇に転じていることから「上振れリスクがかなり大きいと評価し、政策的な対応を打った」とも述べ、判断材料の一つに歴史的な円安の影響があることを明かした。「必ずしも(円安が)利上げの最大の要因ではなかった」とわざわざ断っていることからも、円安への対応が小さくなかったことをうかがわせる。
日銀の追加利上げの決定を受け、円相場は7月31日の海外市場で一時1㌦=149円台を付け、東京市場でも乱高下しながらも150円台に急騰。米景気のインフレ弱含みから、160円まで下落した円相場は徐々に円高方向に進み、150円を切るところまで戻している。
この間には7月11日と12日の2夜連続で、4~5月以来の総額5兆5348億円の「覆面介入」もあった。政府・日銀の円安阻止への努力を多としたい。
利上げによって、変動型住宅ローン金利の引き上げなど家計・企業にも影響が出てくるが、植田総裁が会見で語ったように「(政策金利は)非常に低い水準で、強いブレーキが景気にかかるとは考えていない」とみて間違いないであろう。
むしろ、今後さらに円高傾向が趨勢(すうせい)的に定着していけば、輸入インフレによる物価高は収まり、食品などの値上げも落ち着く。マイナスが2年以上も続く実質賃金の伸びがプラスに転じるのも間近になる。物価高で低迷する個人消費は、物価高要因が剥落して「賃上げが一段と進み、賃金・所得の増加が支える」(植田総裁)ことになろう。
金融正常化を着実に
国債買い入れ額の減額により、量的引き締めも進むことになる。金利急騰のリスクも想定されたが、日銀は債券市場参加者との会合開催などを通じて市場との対話を進め、買い入れ額を現在の月間6兆円程度から2025年度末に3兆円程度に半減することを決定。市場では事前の想定通りとして、不測の混乱も抑え込んだ。植田総裁の政策運営の慎重かつ丁寧さがうかがえ評価できる。
植田総裁は今後の金融政策運営に関して、データ次第で年内の再利上げもあり得る考えを示した。データにはもちろん海外も含まれる。内外の景気動向をにらみながら、歴史的円安の是正と金融正常化を着実に進めてもらいたい。