ラオスの首都ビエンチャンで東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議が開かれた。南シナ海では中国の覇権主義的な行動が特に目立つ。日本は米国などと連携し、東南アジアへの関与を深めていくべきだ。
外交攻勢強める中国
一連の会議では、紛争が続くミャンマー問題や中比で衝突が起き緊張が高まる南シナ海問題が主な議題となった。日本とASEANの外相会議に出席した上川陽子外相は、中国を念頭に「力による一方的な現状変更の試みは、世界のどこであれ認められない」と訴えた。
フィリピンが実効支配する南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁付近では6月、比物資運搬船と中国海警局船舶が衝突し、比軍兵士8人が親指を切断するなどのけがをした。この際、刃物を持った中国側要員が比側のゴムボートに穴を開けたほか、武器を強奪したという。
上川氏は関連会議の一つである東アジアサミット(EAS)外相会議で「国際法に基づく紛争の平和的な解決が重要だ」と強調した。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年7月、南シナ海での中国の領有権主張を退ける判決を下したが、中国は判決を「紙くず」と呼んで無視している。中国には「法の支配」の価値観を掲げて対応することが不可欠だ。
フィリピンの置かれている状況は、日本にとっても人ごとではない。中国海警局の船舶は沖縄県・尖閣諸島周辺の領海への侵入を繰り返し、日本漁船に接近しようとするなど危険な動きも見せている。日本はASEANとの一層の関係強化を図る必要がある。
しかしASEAN全体では、中国に対して一枚岩とは言えない。ASEAN加盟国の中には、経済的に依存する中国への配慮を優先する国々もある。ラオス外務省が発表した共同声明では、南シナ海問題について「人の安全を脅かす危険な行為などに対し、一部外相は懸念を表明した」という表現にとどまった。
中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた重要インフラ支援などで東南アジアへの浸透を図ってきた。中国からラオス、タイ、マレーシア、シンガポールを結ぶ鉄道計画を打ち出したほか、カンボジアとは軍事面の連携を強化。ミャンマーでは国軍と少数民族武装勢力の仲介に乗り出すなど影響力を強めている。
EASにはASEAN10カ国のほか、日米両国や中国、ロシア、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの計18カ国が参加する。ASEANに外交攻勢を強める中国に対抗するため、日本は権威主義的なロシアを除く域外参加国と連携しなければならない。
重要な地域フォーラム
関連会議の一つとしてASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合も開催された。ARFはEAS参加国に加え、北朝鮮をはじめとするアジア各国や太平洋島嶼(とうしょ)国のパプアニューギニア、欧州連合(EU)など27カ国・機関が参加している。地政学上の要衝である東南アジアで、さまざまな国の代表が一堂に会する機会は重要である。