
米共和党全国大会で大統領候補に指名されたトランプ前大統領は、受諾演説で「米社会の不和と分断は癒やされなければならない」と強調した。大統領選でも米国の結束を掲げ、闘ってほしい。
「全体のための大統領に」
トランプ氏は大会の直前、演説中に銃撃を受けて右耳を負傷した。受諾演説では銃撃で亡くなった男性に黙祷(もくとう)を捧(ささ)げ、「頭を動かしていなかったら銃弾は命中していた。神が味方してくれた」と振り返った。
銃撃した容疑者の男は犯行現場で射殺され、なぜトランプ氏を狙ったかは分かっていない。ただ、この事件は米国の民主主義が危機的な状況にあることを示したと言えよう。トランプ氏は事件後、演説の原稿を自ら大幅に書き直したという。
米国の分断を修復する上で必要なのは、強い指導者だ。トランプ氏は「米国の半分でなく、全体のための大統領になるため立候補する」と力強く表明。不法移民の流入阻止のため、壁を完成させて国境を閉鎖すると公約したほか、経済政策では「インフレ危機を終わらせ、金利を低下させ、エネルギーコストを押し下げる」と強調した。
6月のテレビ討論会でトランプ氏と対決したバイデン大統領は、高齢による影響が不安視される結果となった。民主党内ではバイデン氏撤退も取り沙汰されている。一方、銃撃事件によって共和党内ではトランプ氏の求心力が高まっている。
もう一つは、キリスト教に基づく米国の建国精神に立ち返ることだ。米国の独立宣言は「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」と高らかに述べている。トランプ氏は「政治がわれわれを頻繁に分断するこの時代、今こそ、皆が同じ市民であることを思い出す時だ」と訴え、国民の結束を目指す意向を示した。
対外政策に関して、共和党は全国大会で「中国車の輸入阻止」などを盛り込んだ綱領を採択。中国を巡っては、世界貿易機関(WTO)の規定に基づいて関税を低く抑える「最恵国待遇」を撤回するとしている。トランプ氏は自身が再選された場合、中国からの全輸入品に60%以上の関税を課すことを検討する考えを示している。こうした政策が実現すれば、経済が停滞する中国には大きな打撃となろう。
同盟での役割拡大を
共和党の副大統領候補には、バンス上院議員が指名された。バンス氏は「米国第一」を強調する一方で「同盟国が世界平和を確保するための重荷を分かち合うことを確実にする」とも述べ、安全保障において「タダ乗り」はさせないと訴えた。これはトランプ氏の意向にも沿ったものだ。
日本は米国との同盟における役割分担を拡大し、これを防衛力強化につなげる戦略を描く必要がある。次期米大統領が誰であったとしても、覇権主義的な動きを強める中国を抑止し、安倍晋三元首相の掲げた「自由で開かれたインド太平洋」を実現するため、同盟強化への不断の取り組みが求められる。






