トップオピニオン社説【社説】念書の有効性裁判 信教の自由侵害を警鐘する

【社説】念書の有効性裁判 信教の自由侵害を警鐘する

旧統一教会の献金を巡る訴訟の上告審判決のため、最高裁に向かう原告団=11日午後、東京都千代田区
旧統一教会の献金を巡る訴訟の上告審判決のため、最高裁に向かう原告団=11日午後、東京都千代田区

個人が信仰をする宗教の法人に多額の献金をする際に、それが本人の自由意思に基づくものであり、後にその個人が法人に損害賠償請求の訴訟等を一切提訴しないと、公証役場の認証付きで作成した「念書」について、無効とする最高裁判決が初めて下された。

 判決の重み受け止め

この念書の効果と共に、裁判ではその信者が行った献金が「不法行為による損害」であるかどうかについても判断されたが、これについては二審である高裁に差し戻された。訴えられた宗教法人世界平和統一家庭連合(家庭連合)は、まず判決を「重く受け止める」とした。確かにそうではある。

だが、まずもって最高裁は、事実審である一審と二審で事実認定した「念書作成者は献金をした信者本人」「内容も信者本人の意思通り」の二つを覆した。民事訴訟法に違反していないか。

この間を振り返ると、一昨年の安倍晋三元首相の暗殺事件を機に、被告人の問題を追及するトーンを遥かに超え、母親が信者の家庭連合に彼が恨みを抱いていたとの供述の報道から、家庭連合自体の問題を追及する空気が、不可思議にも日本社会を支配していったかのようだ。結果として家庭連合では、教師による信仰を理由とした学校での差別発言、企業での就職の内定取り消しなど、副作用としての一般信徒への人権侵害報告がこの2年足らずの期間に337件あったとし、各紙も報道した。懸念されるのは、憲法で保障された信教の自由への侵害である。

裁判は家庭連合に長年反対する全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)と結託し、家庭連合信者である母親の信仰と献金に反対する長女が起こした。長女による反対は、母親にとってもともと不本意であった。それで母親は所属教会の信者で構成する信徒会に相談し、念書を家庭連合に差し出すことによって、信仰の証しとしての心からの献金の有効性を自ら担保しようとしたのである。ところがその後、長女は家庭連合はもとより、母親を伝道した三女との連絡すら遮断し、母親を隔離された状況に置いたのである。

母親の信教の自由が脅かされかねない中で提訴された裁判であったが、2021年の一審では念書の有効性が認められた。母親が他界した後の22年の二審も一審を支持した。

しかし今日、母親の信仰についての真意は日本社会の偏った環境の下、侵害された。念書は無効というのだ。隔離して説得と聞くと、4300人に上る家庭連合信者の強制棄教のパターンを想起せざるを得ない。

 献金は信仰に基づく行為

10年間、13回にわたり韓国を訪れ、先祖を解怨する儀式に参加することを通じて行った献金について、母親が「家庭連合の心理的影響下に置かれて」と最高裁は述べ、信仰の真意について内心に踏み込み、冷静さを欠いたなどと判断している。

だが、家庭連合は「教理に従い、献金を捧げ、宗教儀式に参加することは信仰に基づく行為そのもの」と主張する。信教の自由が侵害され、それを正当化するような最高裁判決であってはならない。

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