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【社説】海の日 環境と権益守るため行動を

きょうは国民の祝日である「海の日」。近年、海洋を取り巻く状況は、環境面、政治面において大きく変化している。いち早く対応し、海洋国家としての位置を揺るぎないものとしたい。

 酸性化で温暖化が加速

科学的な知見の普及で、海洋が二酸化炭素(CO2)の吸収など地球環境全体のバランサーとしての役割を果たしていることが知られるようになった。一方で汚染が進み、人類が今まで通り海の恩恵を受けられるか危ういことが明らかとなっている。

とりわけ懸念されるのが、海洋に溶け込むCO2の量が増大し、酸性化が進むことだ。酸性化でCO2の吸収力が低下し、温暖化がさらに加速する。プランクトンや貝類が減少し、それを餌としている魚の減少に繋(つな)がると言われる。海洋の包容力も限界に近づいている。CO2の排出削減は待ったなしである。

プラスチックごみ問題も深刻だ。海に流れ込んだプラごみが分解されるのには何百年以上もかかるという。ペットボトルなどが劣化して5㍉以下の欠片となったマイクロプラスチックが生態系を破壊する。日常的にプラごみの削減に努めたい。

政府は6月、太平洋の小笠原諸島・父島東方に位置する「小笠原海台海域」の大部分を日本の大陸棚と定める政令改正を決定した。広さは本州の約半分の12万平方㌔。国連の委員会から認可を受け、海域を接する米国との調整を続けてきた。

国際海洋法条約では、大陸棚では資源を採掘するなど主権的権利が認められている。同海域のレアメタル(希少金属)を含むコバルトリッチクラストなど海底資源の開発が期待される。

また東京大学と日本財団は、日本の排他的経済水域(EEZ)内の小笠原諸島・南鳥島沖の深海底に、レアメタルを含むマンガン団塊が2億㌧以上密集する鉱床を発見し、2026年にも1日数千㌧の大規模採取を開始して20年代末までに年間300万㌧規模の商業開発を目指すと発表した。採取した団塊の分析から、世界的に供給不足が心配されるコバルトは国内消費量の約75年分と推計されるという。

「宝の海」を保有する日本は、海洋資源大国となるための条件を十分備えている。政府は100年先を見据えて海底資源開発を国家的プロジェクトとし、技術開発、商業化への取り組みを後押ししていくべきである。

一方、周辺の公海上では、海洋進出を強める中国がマンガン団塊などを独占的に探査する権利を国際海底機構から取得。さらに沖ノ鳥島(東京都)北方の大陸棚「四国海盆」海域に6月、浮標(ブイ)を設置している。

 中国に断固とした対応を

大陸棚の上部水域での海洋調査に沿岸国の同意は必要ないが、海底の探査などに関係する場合は条約に違反する。中国は東シナ海でも昨年7月、尖閣諸島(沖縄県)周辺のわが国EEZ内にブイを設置。日本側が抗議し、即時撤去を求めているが応じていない。

中国には、尖閣諸島周辺に海底資源が存在する可能性が指摘され、急に領有権を主張しだした過去がある。わが国の海洋権益を侵そうとする動きには断固とした対応を取る必要がある。

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