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【社説】6月の日銀短観 円安修正で一段の景況改善を

日銀が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感が小幅な改善にとどまり、回復の鈍さを浮き彫りにした。大企業非製造業は小幅ながら16四半期ぶりに悪化し、先行きはさらなる悪化を見込む。

円安が原材料高やエネルギー価格上昇などコスト負担増を招き、製造業と非製造業の双方で景況改善の重しになっている。企業の想定為替レートを大幅に上回る円安の修正が必要だ。

非製造業は先行き懸念

大企業製造業の景況感は、幅広い業種で価格転嫁が進み、2四半期ぶりに改善したものの、急速な円安進行により原材料・エネルギー価格が上昇。さらにトヨタ自動車などで6月に新たに発覚した認証不正に伴う車の生産・出荷停止が重しとなり、景況感を示す業況判断指数(DI)がプラス13と2ポイントの小幅改善にとどまった。

大企業非製造業は、訪日外国人による旺盛な消費が続いたものの、原材料高などに加えて人件費の高騰が響いてプラス33(前回はプラス34)と、コロナ禍が生じた直後の大幅な悪化以降、4年ぶりに景況感が悪化。円安を背景とした相次ぐ値上げで家計の節約志向が強まり、消費が冷え込んだことも影響した。

短観は現状で企業心理の改善の鈍さを浮き彫りにしたが、先行きでも楽観できない点があることを示している。先行きの景況感で、大企業非製造業が大きく悪化を見込んでいることだ。円安の進行などによる一段のコスト増への懸念からである。

全規模全産業の2024年度の想定為替レートは、1㌦=144円77銭(前回調査では141円42銭)と円安方向に修正されたが、現在の円相場は想定より約17円も安い水準である。

輸出企業の多い製造業では車や半導体の生産回復への期待もあり、大企業、中小企業とも1ポイントの小幅改善を見込むが、非製造業では大企業で6ポイント、中小でも4ポイントとかなりの悪化を見込んでいるのである。

非製造業の先行き悪化懸念には、円安によるコスト増ばかりでなく、製造業以上に厳しい人手不足とそれによる人件費の高騰もある。

特に運輸・郵便や建設では、時間外労働規制の強化による「2024年問題」で人手不足が一段と深刻化しており、中小の運送会社では長距離配送の依頼を断らざるを得ないところが少なくないという。人手不足で需要取りこぼしの憂き目に遭っているのである。

理にかなう追加利上げ

非製造業のこうした懸念を和らげ、景況感の改善を一段と拡大し高めるには、まずは大きなコスト増要因になっている円安の修正が不可欠である。

為替介入は効果や持続力の点で限界もあるが、当局の断固とした姿勢を示す一つの手段として有力な選択肢である。

日銀は今月末に開く金融政策決定会合で国債買い入れ減額の具体策をまとめるが、追加利上げも景況改善の重しになっている円安を是正する意味で理にかなっている。景気への影響がなくはないが、小幅な利上げであれば円安是正によるメリットの方が大きいのではないか。

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