トップオピニオン社説【社説】自衛隊70年 防衛力保持を憲法に明記せよ

【社説】自衛隊70年 防衛力保持を憲法に明記せよ

自衛隊の創設から70年を迎えた。当初、憲法9条にある戦力不保持の条文に反するとして「憲法違反」との世論の批判を受け、廃止を求める激しい反対運動に直面し、国会でも長らく与野党論戦の標的になってきたが、今日では自衛隊を認める世論が支配的だ。しかし、9条の条文は自衛隊論議に常に争点を引き起こしてきており、わが国を守る戦力について憲法に明文規定を置くべきである。

国際的には軍との認識

1954年7月1日に防衛庁設置法、自衛隊法の防衛2法を施行して自衛隊は創設された。管轄官庁は総理府(現内閣府)の外局にすぎない防衛庁であり、防衛省への昇格は2007年になってからだ。

敗戦で旧軍は解体され、現憲法により戦力は保持しないとされた。だが占領下の1950年に朝鮮戦争が勃発したことを受け、連合国軍総司令部(GHQ)は米軍が朝鮮半島へ振り向けられる軍事的空白を埋めるため警察予備隊を編成した。

同予備隊は52年に保安隊に改編、54年創設の自衛隊につながった。東西冷戦が極東で火を噴き、米国が対日政策を転換し、再軍備を働き掛ける中で政府は憲法を維持しながら9条解釈で自衛隊を合憲とした。が、憲法に防衛2法の根拠となる明文規定がないため、社会党、共産党など自衛隊違憲論を掲げた野党の追及に政府・自民党は安全保障論議で悩まされた。

かつて自衛隊では戦車を「特車」と呼び、航空機の航続距離をあえて短くするなどの処置が取られたほどだ。

しかし、今や国際的には自衛隊は軍と認識されている。航空自衛隊の最新鋭戦闘機F35A、海上自衛隊のヘリコプターおよびF35Bの搭載が可能な護衛艦「いずも」、陸上自衛隊の10式戦車など、いずれもれっきとした軍の装備だ。

今年度の防衛予算は7兆9496億円にまでなっている。総額43兆円の防衛力整備計画(2023~27年度)に基づき前年度比16・5%増額した。世界各国の軍事費と比較しても、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の調査による23年ランキングでわが国の防衛予算はドル換算で10位だった。隊員数は22年度末で22万7843人で、23年度防衛予算の3割以上が人件・糧食費であり、3割弱が訓練・維持費である。

わが国は諸国の軍隊に伍(ご)する予算、装備、兵士たる隊員を持つ自衛隊によって、日米安全保障条約に基づく国同士の防衛協力を可能ならしめている。自衛隊が70年間、日本の屋台骨を支えてきたことは疑いない。

国民の理解が深まる

だからこそ、国民の理解は深まり自衛隊は定着した存在になった。内閣府が22年11月から12月にかけて実施した世論調査でも、自衛隊への印象は「良い印象を持っている」「どちらかといえば良い印象を持っている」を合わせて90・8%だった。規模については「増強」が41・5%、「今の程度」が53%だ。

これは憲法9条の条文と矛盾するが、国民の自衛隊を認める感覚は現実的だ。むしろ憲法を現実に合わせて防衛力の保持を明記すべきである。

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