トップオピニオン社説【社説】能登地震半年 課題解決し復旧の加速を

【社説】能登地震半年 課題解決し復旧の加速を

元日の能登半島地震からきょうで半年となった。復旧の遅れが目立ち、特に奥能登地方では時間が止まったままとの声も聞かれる。ギアを入れ直し復旧・復興を加速させるため、知恵と力を結集する必要がある。

被災家屋の解体進まず

石川県によると、同県の地震による死者は災害関連死が18人追加され、全体で300人を超える見込みだ。2016年の熊本地震の276人を上回り、東日本大震災、阪神・淡路大震災に次ぐ死者数となる。

住宅被害も大きく、県内で8万棟を超え、うち全壊が1割、半壊が2割を占めている。半壊以上は公費による解体の対象となるが、その公費解体も進んでおらず、周りの風景は発災時とほとんど変わっていない。

基幹産業の一つである漁業も、漁港が地盤の隆起によって使えなくなるなど甚大な被害を受けたが、復旧の見通しすら立っていない漁港もある。輪島塗などの伝統工芸や朝市など観光産業の再建のためにも、公費解体の加速が急がれる。業者の不足などの課題を克服するためには県レベルでは限界がある。

このような状況を打開しようと政府は、復旧・復興を支援する省庁横断の専門チーム「能登創造的復興タスクフォース」をきょう発足させる。国土交通省、農林水産省、経済産業省などから100人以上の職員が県内に常駐し、家屋の解体・撤去や生業の再建を後押ししていく。

また、石川県が新たに設けた「復興基金」の財源として特別交付税520億円が交付された。これらによって一つ一つの課題を解決し、復旧・復興の歯車が動きだすことを期待したい。

能登地方は高齢化、過疎化が進んでいるが、人口の減少に拍車が掛かっている。特に奥能登4市町では、地震前に国が推計した2倍近いペースで人口が減少していることが県のまとめで明らかとなった。

今回の地震では1万人近くが広域避難をしている。この大半は住民票を移してはいないが、復旧・復興が遅れれば帰還を諦める人が出てくるとみられる。特に子育て世代は、そうせざるを得なくなる可能性が高い。

子育て世代の人口流出を防ぐためにも家屋、社会インフラ、生業の再建が急がれる。復旧・復興の未来を左右する地域共同体の維持にも工夫と努力、自治体の支援が求められる。

被災家屋の解体撤去には、ボランティアの働きも大きい。人員が減りつつあるが、受け入れ態勢をさらに整えるとともに、全国のボランティア組織により強く働き掛け、能登の本格的復旧・復興はこれからであることを訴える必要がある。

熱中症への警戒必要

気を付けたいのが、これからの暑さ対策だ。気象庁の予報では6~8月の平均気温は全国的に高く、特に8月は北陸地方も厳しい暑さが続く見通しだ。避難生活を続ける高齢者に対しては、仮設住宅などへの保健師や介護福祉士による見回りも始まっているが、熱中症への警戒が必要だ。また復旧作業に携わる作業員、ボランティアの人たちは、作業につい熱中してしまう傾向があるので、水分補給、休息などを心掛けてもらいたい。

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