トップオピニオン社説【社説】露朝新条約/国際秩序破壊の非道を許すな

【社説】露朝新条約/国際秩序破壊の非道を許すな

ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が平壌で会談し、首脳相互の親密ぶりをアピールするとともに、安全保障や経済など幅広い分野での協力を約した「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。

「軍事援助提供」と明記

ウクライナ侵略が長期化する中、北朝鮮からの武器、弾薬の供給に頼っているロシアとしては、両国の関係を強化する必要がある。条約は「一方が戦争状態になった場合、軍事的な援助を提供する」と明記しており、軍事協力は一段と強まった。

ソ連崩壊後の1996年に失効したソ朝友好協力相互援助条約を復活させ、戦闘機F16の供与などウクライナへの軍事支援を強める欧米諸国を威嚇しようとするロシアの意図が読める。さらに、北朝鮮はロシアのウクライナ侵略を全面的に支持する数少ない国の一つだ。新興国グループ「BRICS」諸国などと共にこの国を引き寄せ、欧米への対抗軸を形成することでロシアの孤立化を防ぎ、世界の多極化を促したい思いもある。

一方、正恩氏は条約締結を「歴史的な出来事」と絶賛した。軍事協力関係が公然化したことで、北朝鮮は日米韓への対決姿勢を強めるとともに、ロシアへの武器提供を増大させる可能性がある。またその見返りに、軍事偵察衛星の打ち上げやミサイル開発、さらに原子力潜水艦建造などの技術の提供をロシアに求めていくものと思われる。

今後、実際にロシアが北朝鮮の要望に対してどの程度まで応じるかは定かでない。しかし、北朝鮮の軍事能力を引き上げ脅威を拡散すれば、ウクライナ支援に向ける日米韓の力を削(そ)ぐことにもなる。欧州とアジアの安全保障は不可分であり、ウクライナ侵略の推移次第では、露朝の軍事協力が加速される事態も想定しておかねばならない。

北朝鮮を支援しながらも、これまで軍事協力には慎重だった中国は、プーチン氏の訪朝を受けてどう動くだろうか。表向き静観の立場だが、北朝鮮、次いでベトナムと中国周辺でのプーチン氏の行動に注意を払っていることは間違いない。

ただ、国際社会の視線を意識する中国としては、米国はじめ各国からの非難を恐れ、制裁を受けている北朝鮮に対し積極的な軍事支援に転じるなど大きな政策変更に出ることは表面上はないと思われる。露朝の急速な接近を対米交渉のカードに利用し、北朝鮮の後ろ盾として振る舞うことで米国への影響力の強化に努めるのではなかろうか。

両国にさらなる制裁を

今回のように国際社会から制裁を受けている国の首脳同士の会談は異例だが、それにとどまらずロシアが国連安全保障理事会の決議違反となる北朝鮮との軍事協力の拡大強化を公言して憚(はばか)らない姿勢をわれわれは到底容認できない。安保理常任理事国のロシアが、隣国への侵略にとどまらず、安保理決議を公然無視する暴挙は許し難い。

国連はじめ各国際機関や自由諸国は国際秩序を破壊するロシアの非道を糾弾するとともに、互いの連携を強め、露朝の軍事協力を阻止するためさらなる制裁に動く必要がある。

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