【社説】経団連「別姓」提言 子供への影響を忘れるな

経団連が政府に対して、選択的夫婦別姓制度の導入を求める提言を行った。経済団体として働く女性の不便さ解消に力を入れるのは当然だが、家族の問題で最も重要な子供の利益を考慮しておらず、責任ある提言とは言い難い。

家族の一体感強める同姓

家族の幸せは、働く者にとって力の源泉だ。現行の夫婦同姓制度では、姓は「家族の呼称」(ファミリーネーム)であり、家族との一体感を強める。一方、別姓制度では「個人の呼称」となってしまう。

その制度を導入すれば、生まれた子供の姓を巡って夫婦間でもめるなど家族に軋轢(あつれき)を生む懸念がある。児童虐待の増加など家庭の崩壊が深刻化する現在、必要なのは家族の絆を強める施策である。別姓はそれに逆行するもので、悪(あ)しき個人主義を蔓延(まんえん)させることになる。そのような危険性を孕(はら)む制度導入には到底賛成できない。

同姓制度では、結婚する場合、どちらかが改姓する必要がある。現在は、妻の95%が夫の姓に改姓している。このため、働く女性にとって仕事の上で不便が生じているのは事実だ。それを考慮し、多くの職場で旧姓の「通称」使用を認めるようになっている。

だが、経団連の調査では、88%の女性役員が旧姓の通称使用でも「何かしら不便さ・不都合、不利益が生じると思う」と回答している。確かに、通称使用が認められても、税務や社会保険の書類作成時に戸籍上の姓との照合作業などは煩雑になる。だからと言って、子供への悪影響を考慮しないで「一人ひとりの『選択肢』を増やす観点から」別姓の導入を提言するというのは理解に苦しむ。経団連は姓の持つ意味を正しく捉えていないのではないか。

内閣府が2年前に公表した調査によると、別姓制度を「導入した方がよい」と答えた割合は29%にとどまっている。一方、同姓制度を「維持した方がよい」は27%、また同姓制度を維持した上で「旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」は42%だった。

これをもって、別姓賛成派が同姓維持派を上回ったと報道するマスコミがあったが、それは間違いだ。同姓維持派は約7割に達しているのだ。旧姓の通称使用の法制化も同姓制度を維持した上での改革だからだ。

この調査で特に注目したいのは、7割が夫婦の姓が違うことで「子供に好ましくない影響があると思う」と答えたことだ。具体的な悪影響として、家族の一体感が失われること以上に多かったのは「友人から親と姓が異なることを指摘されて、嫌な思いをするなどして、対人関係で心理的負担が生じる」ことだった。これを8割近い人が指摘している。

いじめられることを懸念

選択的夫婦別姓では、同姓の家族と別姓の家族が出てくる。世論調査を見ると、別姓の子供は少数派となり、同姓の家族と比較し寂しく感じたり、親との姓の違いでいじめられたりすることも懸念されている。働く女性の不便さ解消だけのために、同姓制度を変えようとするのはもっての外である。

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