【社説】米軍大規模演習 有事への日米即応体制強化を

米軍が2年に1度太平洋地域で実施する大規模演習「バリアント・シールド」が行われた。10回目となる今回は初めて自衛隊が参加し、自衛隊基地でも訓練が実施された。日本周辺で有事が発生した場合に備え、日米の即応体制を強化すべきだ。

各地の自衛隊基地で訓練

バリアント・シールドは、米軍が2006年から実施する1万人規模の実動演習。米側から自衛隊を招待し、一部訓練を日本国内で行いたいと申し出があったという。陸海空各自衛隊から計約4000人と車両約130両、航空機約60機などが参加。国内9都道県の自衛隊基地などで、日米戦闘機の展開訓練や空挺(くうてい)降下訓練、対艦戦闘訓練などが実施された。ハワイやフィリピンなどの周辺海空域でも共同訓練が行われた。

自衛隊が参加したのは、インド太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中国を念頭に置いているとみていい。中国は南西諸島から台湾、フィリピンに至る「第1列島線」と、小笠原諸島からグアムやパラオに至る「第2列島線」を防衛ラインとして位置付け、米軍の接近を阻止する戦略を取っている。

演習はこれまでグアムを中心に米軍単独で行ってきた。今回初めて日本本土や第1列島線まで範囲を広げたのは、中国への危機感の表れと言えよう。

中国は今年5月、台湾の頼清徳総統が就任演説で中台統一を明確に拒否する発言をしたことに反発し、台湾を取り囲む形で大規模な統合演習を実施した。「台湾有事は日本有事」とも言われ、中国による台湾への威圧は日本にとっても決して人ごとではない。

中国の習近平国家主席は統一に向けて武力行使も辞さない構えだ。台湾侵攻は27年までに行われるとの見方も出ている。27年は習氏が3期目の任期を終える年だ。建国の父、毛沢東も成し得なかった中台統一を実現し、4期目入りを果たすもくろみがあるとも言われる。その意味で、日米の共同対処能力を高めることは極めて重要だ。

中国が東・南シナ海で強引な海洋進出を続けていることも懸念材料だ。一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島周辺では、中国海警局の船が領海侵入を繰り返し、日本漁船に接近するなどの危険な動きも見られる。南シナ海では、領有権を争うフィリピンの船に中国海警船が衝突したり放水銃を発射したりするなど威圧的行動が目立つ。

さらに、中国海警局の法執行手続きに関する新規定が施行され、中国が主張する「領海」に侵入した外国人を最長60日間拘束できるようになった。中国の覇権主義的な動きが今後エスカレートすれば、偶発的な衝突が生じかねない。

同志国との連携深めよ

日米同盟は地域の安定と繁栄のための「公共財」だ。東アジアでは、ロシアとの軍事協力や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威も高まっている。

抑止力の向上に向け、日本は米国との共同訓練を重ねるとともに、韓国、フィリピン、オーストラリア、インドなど地域の同志国との連携を深める必要がある。台湾との安保対話の枠組み創設も検討すべきだ。

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