【社説】日露条約交渉 継続条件なしは納得できない

ロシアのプーチン大統領はサンクトペテルブルクで開催された国際経済フォーラムに合わせて記者会見を開き、わが国との平和条約締結交渉について「継続する条件が今はない」と述べ、ウクライナ軍事侵攻に対する制裁などを理由に挙げた。また、ウクライナ支援を行う欧米諸国に核威嚇を繰り返したが、不法な領土拡大は北方領土も同様であり終わらせるべきである。

プーチン氏が制裁に反発

ロシアは危険な国になって国威発揚しているのか、プーチン氏は経済力をアピールするイベントに際しても核兵器の使用はあり得ると欧米諸国を恫喝(どうかつ)する発言をしながら、ウクライナ軍事侵攻を正当化した。ウクライナ領土への本格的な軍の投入はロシアのあからさまな侵略であるが、プーチン氏はロシア国内で「戦争」と呼ぶことを禁止している。

だが、国際法を踏みにじる主権侵害を行うロシアへの制裁は国際的な広がりを持って支持され、多数の国が加わっている。わが国も当然のこととして制裁に加わったのであり、プーチン氏が交渉再開を拒否しないものの「まず日本側で必要な条件が整えられた場合に限る」と述べているのは、筋違いである。

上川陽子外相は今国会の外交演説で「力による一方的な現状変更を決して認めてはならないと確信した」とウクライナ訪問における所感を述べるとともに、ロシアとは北方領土問題を解決し、日露平和条約を締結する方針を堅持すると表明した。わが国の対露関係改善には、ロシアが国際法に違反した領土拡張を撤回するしかない。

現状は厳しく困難であるが、仮に交渉が継続できたとしても北方領土問題の解決と平和条約締結が実現する保証は全くない。2016年に日本で行われた安倍晋三首相とプーチン氏との日露首脳会談でも領土返還についてはゼロ回答だった。

ロシア側の狙いは、北方領土をロシア領としながら日本側のビザなし渡航を認める経済特区として経済交流を深め、ウクライナ侵攻直前までのドイツのようにサハリン沖の天然ガス供給によって米国寄りの日本の外交路線をロシア側に引き寄せることであろう。日米関係を基軸とする外交方針が動じなければ、プーチン氏が意欲を示す北方領土訪問で日本側の焦りを誘うとみられる。

実際、ロシア政府高官がたびたび北方領土入りするようになっており、ウクライナ侵攻後のロシアは中国、北朝鮮などとの関係を深め、米国や欧州連合(EU)諸国などと共に対露制裁に参加するわが国に対しては、高圧的な態度があらわになっている。しかし、わが国に「条件がない」と責任転嫁するのは本末転倒も甚だしい。

経済力だけで解決できぬ

ただ、わが国は旧ソ連時代と変わらぬロシアと米国との安全保障上の対立が深まった中で、戦後から続く憲法9条問題の克服を疎(おろそ)かにし、自国軍を持たず対米依存から脱せないことが、対露政策の弱点となった側面は否めない。ソ連崩壊という千載一遇のチャンスをものにできなかった失敗は、経済力だけの解決が可能と見誤ったからだ。

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