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【社説】出生率最低 非常事態の認識持って対策を

少子化の勢いに歯止めがかからない。改正子ども・子育て支援法などが成立したが、少子化の流れを大きく変えるとは思われない。政府は非常事態の認識を持って対策を立て直すべきだ。

東京では1を下回る

厚生労働省が発表した2023年の日本人の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は、過去最低の1・20となった。人口の一極集中が進む東京都は0・99で、ついに「1」を下回った。

東京には各地から若者が集まり、出産の中心世代である20~30代の女性の14%が暮らしている。しかし、都道府県別の女性の未婚率は東京が最も高い。さらに、生活コストの高さなどから出生率も全国最低となっている。一方、地方では20代女性が出て行き、出生数は減るばかりだ。東京の人口のブラックホール化がますます進んでいる。

都は出生率の増加のため、低家賃の都営住宅に若年カップルが優先入居できる制度や、私立を含めた高校授業料の実質無償化を導入した。これらの施策はある程度の効果は上げるだろう。また、開発に乗り出したマッチングアプリでカップル誕生も増えることが期待される。

だが、そもそも東京で生活する若者たちは、多様化する価値観や都市型のライフスタイルの影響から、結婚や出産、子育てへの指向性が低いとみなければならない。出生率低下はさまざまな要因が絡んでいるが、東京への一極集中のほか、婚姻数の減少、晩産化が大きい。

岸田文雄政権が掲げる「次元の異なる少子化対策」の柱となる改正子ども・子育て支援法などが成立した。児童手当の今年10月分から所得制限を撤廃し、支給期間を高校生年代までに延長するなど、子育て世帯への経済支援を幅広く拡充することに主眼が置かれている。

しかし、これは結婚し子供をもうけようという人たちが対象だ。それ以前にまず、さまざまな理由から結婚に至らない若者が増えている。婚姻数は前年より3万213組少ない47万4717組で、90年ぶりで50万組を下回った。

また、第1子出産時の母親の平均年齢は31・0歳で、前年の30・9歳から上昇している。別の統計では、35歳以上で第1子を出産する割合が00年には6・7%だったが、20年には20・9%に増加。晩産化が出生率を低下させる傾向が続いている。

東京一極集中から脱却を

政府が少子化対策の柱とすべきは、結婚したカップルの出産と子育てへの支援よりも、若い世代が結婚し家庭を営めるように促し支援することである。支援と共に結婚や家庭の価値を訴えることだ。価値観の押し付けではなく、結婚と子育ての意義を伝えるのだ。

東京一極集中からの脱却も、地方と連携しながら大胆に行うべきだ。

そのためには、政府機能や首都機能の移転など明治以来の地方から都市への人の流れを変えるような大きな構想が必要だ。リモートワークの普及など環境は整いつつある。政治がそれを先導すべきである。

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