トップオピニオン社説【社説】天安門事件35年 中共の汚点風化させるな

【社説】天安門事件35年 中共の汚点風化させるな

中国の民主化を訴えた学生らが、軍によって弾圧された天安門事件から35年が経過した。学生らは自由の女神像を据えた天安門広場に集結していたところを1989年6月4日の早朝、戦車部隊を伴い狙撃ライフルを持つ戒厳部隊によって踏み込まれ、多数の死傷者を出した。

習政権下で強まる閉塞感

中国当局は死者数を「319人」と発表した。しかし現実はそれをはるかに超え、数千人から1万人規模と分析する海外リポートがある。なお天安門事件で不可解なのは、いまだに事件の真相解明がなされていないことだ。事件の際、戦車の前に立ちはだかった青年や直進を躊躇(ちゅうちょ)した戦車のドライバーも行方知れずのままだ。

それどころか中国では、事件の存在そのものが歴史から抹消されようとしている。中国ではインターネットで「天安門事件」や「6月4日」などは検索できない。検索しようとすると反体制分子と見なされて、ウイルスを送り付けられパソコンが使えなくなることもあると聞く。

だから6・4以後の世代の多くは、学校で学ぶこともないし、天安門事件そのものを知らないままだ。留学などで海外に出て初めて事件のことを知るケースも珍しくない。

中国は対日交渉の場でしばしば「歴史を鑑(かがみ)とせよ」との言葉を発してきた。これは日本に対し、先の大戦への反省を求めることでバーゲニングパワーを強化することが狙いだった。

自分たちのことは棚に上げるご都合主義は誠実さに欠ける。ともあれ、このような「知らしめるべからず」の愚民政策は、いずれ共産党政権への不信感が醸成される原因となり、そのしっぺ返しを食らうことを覚悟すべきだ。

また鄧小平の改革開放路線から強権統治に舵(かじ)を切った習近平政権下で、言論統制は強まるばかりで、多くの人権派弁護士や活動家は国外脱出を図るか服役しているか、もしくは沈黙を強いられている。天安門事件から35年を迎えた中国は、再評価どころか当時以上の閉塞(へいそく)感に包まれている。

日独を抜き去り世界第2の経済大国となった中国ながら、言論および集会の自由が保障された英国式民主主義が定着していた香港に国家安全維持法(国安法)を敷いて香港の自由を奪い取った。さらに併合を進めるため、台湾への武力威圧を強化している。看過できないのは、習政権が反体制派だけでなく、チベットやウイグルなど少数民族への締め付けを加速していることだ。

中国は探査機「嫦娥6号」を月の裏側に着陸させた。サンプルを持ち帰れば人類初となるが、素直には喜べない。宇宙の軍事化を推し進める懸念と、宇宙からの監視網強化が頭をよぎるからだ。

「力による統治」の原点

有無を言わさぬ習政権の「力による統治」が鮮明になりつつあるが、その原点は民主化を欧米列強の陰謀だとして強制排除した天安門事件にある。国民に銃口を向けるという共産党政権の地金が出た天安門事件を、歴史の中に埋没させたり風化させたりしてはならない。

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