トップオピニオン社説【社説】日航トラブル 安全最優先の原点に立ち返れ

【社説】日航トラブル 安全最優先の原点に立ち返れ

日本航空機でトラブルが相次いでいることを受け、国土交通省は鳥取三津子社長を呼んで厳重注意した。

航空機のトラブルが積み重なれば大事故を起こしかねない。日航は再発防止に向け、公共交通機関として安全最優先の原点に立ち返るべきだ。

国交省が立ち入り監査

日航を巡っては5月、羽田空港(東京都大田区)の駐機場で、乗員乗客300人余りが乗った旅客機と、別の旅客機の翼の先端同士が接触するトラブルが発生。また福岡空港(福岡市)では、離陸予定の日航機が、管制官が停止を指示していた停止線を越えて滑走路に接近し、滑走していた別の旅客機が離陸を中止する事態となった。

いずれもけが人はいなかったものの、国交省は羽田空港にある日航の事務所を臨時で立ち入り監査し、トラブルへの対応状況や安全管理体制を確認した。国交省は2月にも、同月の米サンディエゴ国際空港での滑走路接近や昨年11月の米シアトル・タコマ空港での誤進入トラブルなどを受け、日航を立ち入り監査していた。短期間でこれだけトラブルが続くのは、安全意識が低下していることの表れだと言わざるを得ない。

特に福岡空港のケースは、深刻なミスである。管制官が「滑走路手前での停止」を指示したのに対し、3人のパイロットは「滑走路進入を許可された」と誤認していたという。本来はパイロットの復唱と管制官の復唱確認が行われなければならないが、双方ともしていなかった。航空機を運航する上で安全確認のための基本動作を怠れば大事故につながりかねない。

羽田空港では今年1月、日航と海上保安庁の航空機衝突事故が発生。海保機は搭乗者6人のうち5人が死亡、日航機は乗客乗員379人全員が脱出し、うち16人が負傷した。海保機が管制官の指示を誤認したとみられている。

このような事故を繰り返さないため、国交省は復唱や復唱確認の徹底を指示していたが、福岡空港のケースでは守られていなかった。数百人の乗客の命を預かる立場であるにもかかわらず、安全をおろそかにすることは言語道断である。改めて、安全確認の手順を厳守するよう強く求めたい。

国交省は鳥取氏に6月11日までに再発防止策を報告するよう指示した。鳥取氏は「多大なご心配をおかけしたことを深くおわびする」と謝罪。「時間は短いが、しっかり分析した上で対策を取っていきたい」と述べた。

社員の意識を高めよ

4月に客室乗務員(CA)出身者として初めて日航社長に就任した鳥取氏は、東亜国内航空(現日航)に入社した1985年に日航ジャンボ機墜落事故が発生したことから「安全運航の大切さを次世代に継承していく強い責任感を持っている」と述べている。

日航では、コロナ禍からの経済正常化に伴って旅客収入が拡大し、インバウンド(訪日客)の増加で国際線も好調だ。こうした中、事故防止に向け、いかに社員の安全意識を高め、トラブルをなくしていくか鳥取氏の手腕が問われよう。

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