【社説】パレスチナ問題 共存へ中長期的取り組みを

イスラム組織ハマスによるイスラエル急襲から7カ月余り。依然、衝突に収束の気配は見えない。イスラエルのネタニヤフ首相が目指す完全な「ハマス壊滅」が不可能なことは明らかだ。過激組織が生まれない環境の実現に向けて「2国家共存」への中長期的な取り組みが必要だ。

膨れ上がる住民死者数

既に双方の死者は3万5000人を超えた。そのうちハマスなど過激組織の戦闘員は3分の1から4分の1程度とみられている。イスラエルは戦闘とは無関係の住民の犠牲を最小限にとどめるよう尽力していると言うが、住民の死者があまりに多い。ほとんどの住民が家を追われ、避難生活を強いられていることも問題だ。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によると、住民の75%が強制的に住居からの移動を迫られ、回数も4、5回に及ぶ。今また、パレスチナ自治区ガザ南部ラファへの攻撃が始まり、北部への移動を強いられている。

国際社会からの支援も不足している。イスラエル軍が支援物資の入境に慎重だからだ。米国は空からの投下による支援も行っているが量は限定的だ。一方で、米国が設置した浮桟橋からの支援物資の搬入が開始された。住民の窮状の緩和への貢献が期待される。

ハマスの住民への蛮行も、イスラエル政府の発表などから明らかになってきている。国連の支援物資をハマス戦闘員が奪ったり、住民に発砲したりすることもあるという。秩序が壊れた社会では力がものをいう。ハマスにとっては銃こそが命だ。

ハマスの支援物資強奪や支援金横流しは、イスラエル急襲前から伝えられてきたことだ。カタールに滞在するハマス政治部門の指導者数人の個人資産は数兆円に上るとの指摘もある。その原資は国際社会の支援だ。

今回の急襲で、テロ組織としてのハマスの性格があらわになった。今、ハマスを弱体化へと追い込むことは、イスラエルにとっても、ガザ地区のパレスチナ住民にとっても必要なことだろう。その上で、復権させないための取り組みが不可欠だ。

イスラエル内からはこのところ、不協和音が聞こえてくる。ネタニヤフ氏が戦後統治のビジョンを示していないからだ。出口の見えない戦闘にイスラエル内でも苛(いら)立ちが強まっている。国際社会からの逆風も強い。国連総会はパレスチナの加盟を支持する決議を賛成多数で採択した。スペイン、ノルウェー、アイルランドは、パレスチナを国家として承認すると発表した。

イスラエルの協力不可欠

だが、パレスチナの人々が真の独立を望むのであれば、イスラエルと共存できる体制を整えることだ。それができなければ、イスラエルが受け入れることはない。「今、パレスチナが独立することは、隣にテロ国家ができるのと同じ」というイスラエル当局者の発言は深刻だ。

パレスチナ自治政府は、内部の腐敗の撲滅に取り組むことから始めるべきだろう。支援依存体質から脱却し、産業を育て、経済的な自立を目指すことも必要だ。それにはイスラエルの協力が欠かせない。

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