【社説】リニア中央新幹線 強靭化・首都機能移転の柱に

26日に投開票が行われる静岡県知事選で複数の有力候補が、これまで県が反対してきたリニア中央新幹線の工事に前向きの姿勢を示している。リニアは10兆円とも言われる経済効果だけでなく、対策が急がれる国土強靭(きょうじん)化や東京一極集中打開の柱として期待される役割は大きい。

巨大経済圏の誕生へ

東海道新幹線の約2倍の速度で東京・品川―大阪を67分で結ぶリニアは、静岡工区の工事着工に県の同意が得られず、JR東海は当初予定していた2027年の品川―名古屋の開業を断念。開業時期については見通しが立っていない。

着工に反対してきた川勝平太知事の辞職を受けての知事選では、有力候補とされる自民党推薦の元総務官僚、大村慎一氏が「スピード感を持って1年以内に結果を出す」と表明。前浜松市長で立憲民主、国民民主推薦の鈴木康友氏も「問題を解決した上で推進する」としている。

大井川の水量減少、工事で発生した残土置き場の問題、生物多様性への影響などが静岡県の反対の理由だ。国の有識者会議も昨年、環境への影響を最小化するようJR東海に求めている。着工に前向きな候補が当選しても、これらの問題を解決しなければ前に進むことはできないが、対話と技術的な工夫で解決は可能だ。

岸田文雄首相は先月の参院決算委員会で、リニアについて「一日も早い開業に向け関係自治体やJR東海と連携しながら取り組む」と表明。「日本経済の活性化や国土の強靭化につながる」と主張した。

リニアが開業すれば、東京・名古屋・大阪の三大都市圏が約1時間で結ばれ、巨大な交流圏、経済圏が誕生する。その経済効果は計り知れないものがある。一方、東海道新幹線と合わせた二大動脈を造ることで、東海地震や南海トラフ地震発生の際の備えとなる。

元日の能登半島地震で、半島奥地への交通網が寸断され復旧・復興の大きな足かせとなった。1日約46万人を輸送する東海道新幹線が大地震によって不通になった場合、その損害の大きさは能登半島の比ではない。

日本が直面する人口減少と地方消滅の危機への対策の柱として、リニアを位置付け直す必要がある。この問題の解決には東京の一極集中の打破が鍵となっている。東京―大阪を約1時間で結ぶリニア開業は、政府機能、首都機能の沿線地方への移転を容易にするはずだ。

輸出も念頭に推進を

官僚の抵抗で流れてしまった省庁の移転も、リニアの停車駅が設けられる山梨県や長野県、岐阜県に改めて候補地を探すことも可能だ。一極集中打破は、何より政府が率先して行うべきである。国会答弁のために官僚は東京にいないといけないという理屈は通らなくなる。

航空機に近い速度でありながら、1人当たりの輸送に要する二酸化炭素(CO2)排出量がその3分の1というリニアは、環境に優しく、世界的にも次世代の陸上交通の主役となることは間違いない。

海外輸出も念頭に、日本はその先頭を走るべきだ。

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