皇位継承に関する与野党協議が衆参両院議長の下、今週中にも始まる。「立法府の総意」を取りまとめるには時間を要しようが、重要なことは「男系男子」による継承の原則に沿って協議を進めることだ。安定継承は、皇統を守ってこそ可能となる。
女系容認へ誘導報道も
政府の有識者会議は2021年末、今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、次世代の皇位継承資格者として悠仁親王殿下がいらっしゃることを前提に「この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」との意見で一致し報告書を政府に提出した。皇室典範が定める皇位継承の原則は「皇統に属する男系男子」であり、有識者会議はそれを確認したのだ。
具体的には、皇位継承と皇族数の確保は切り離して考えるべきだとしながら、皇族数確保案として①女性皇族が結婚後も皇室にとどまる②旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰する──などを示した。
これらに関しては、皇統の断絶を目指す日本共産党は論外にしても、自民、公明、日本維新の会、国民民主の各党は賛意を示している。立憲民主党は論点整理にとどめている。①で重要なことは、女性皇族の配偶者と子供は皇族の身分を持たないことだ。持てば、皇統の断絶を意味する女系天皇の誕生につながる。
意見が分かれるのは「女性宮家」の創設だろう。上皇陛下の退位を可能にした天皇退位特例法(17年)は付帯決議で、退位後速やかに女性宮家の創設など皇位の安定継承について検討し、国会に報告するよう政府に求めているからだ。
有識者会議は、皇位継承の原則を守ることと共に、もう一つ重要な指摘を行っている。「悠仁親王殿下の次代以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させる」と述べたことだ。
そこで気になるのは、女系天皇を容認する世論調査を背景に、マスコミによって皇位継承の順位を崩す方向へ誘導報道が行われることだ。朝日新聞は社説(7日付)で「女系天皇を認めてもよい」が74%となった5年前の世論調査を持ち出し、既に決まっている皇位継承順位を「変更するのは現実的ではない」としながらも「しかし、その先も男系男子を墨守するのが『国民の総意』といえるのか、大いに疑問だ」と述べた。暗に女系天皇を認めよ、と言っているのだ。
認識の深まりを期待
共同通信は4月末、女系天皇に賛成(「どちらかといえば」も含め)84%、女性宮家の創設賛成77%という世論調査結果を公表した。宮家の役割は本来、皇位継承者の確保にある。女性宮家の子孫は皇位継承の資格を得ることになり、女系天皇の誕生につながるため、われわれは創設にも明確に反対する。
民主主義において世論は重要だ。だが、女系天皇や女性宮家が何を意味するのか。皇室を軽視してきた戦後教育の中で、国民にこれらの認識が十分行き渡っているとは思えない。女性天皇と女系天皇の違いが分からない人も少なくないのである。皇位継承を巡る国会論議を通じ、皇統を守る意義について国民の認識が深まることを期待したい。