【社説】露大統領就任 有事が続くプーチン氏5期目

ロシア大統領選挙で5選を果たしたプーチン大統領が7日に就任式を行い、5期目に入る。任期は2030年までだが、再出馬して6選を果たせば36年まで大統領職を継続できる。圧倒的な権力を掌握していることを踏まえればその可能性が高く、プーチン政権は権力維持のためには手段を選ばない統治を行うと予想される。

膨大な数の戦死傷者

プーチン氏5期目の最大の課題はウクライナ軍事侵攻が続く有事にあることだ。内閣人事が注目されるが、ミシュスチン首相、ラブロフ外相、ショイグ国防相、パトルシェフ安全保障会議書記ら主要閣僚は動かないとみられている。

国民にはウクライナでの戦争を「特別軍事作戦」と呼称することを強制し、戦争を否定しているが、多くの犠牲者と装備および経済の損失を出した。9日の戦勝記念日に向けて欧米諸国がウクライナに供与した戦車、装甲車などの装備をモスクワ市内の戦勝記念公園に展示し、「西側」との戦いの戦果を強調しようとしている。

欧米諸国をはじめとした国際社会の強力な制裁に対して、プーチン政権は中国、北朝鮮との関係を強化し、新興5カ国(BRICS)の一員として外交関係に活路を開くなど対抗策を打ち出している。国債発行、兵士への給与増額、軍需をはじめとする内需拡大、エネルギー資源や穀物の中国、インドなどへの輸出でロシア経済は苦し紛れの中で耐久力を見せている。

プーチン氏は5期目最初の首脳外交として中国を訪問して習近平国家主席と会談するほか、10月にはBRICS議長国としてロシア・タタルスタン共和国の首都カザンでBRICS首脳会議を開催する。

BRICSは今年からエジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が新規加盟で合意しており、プーチン政権は最大限に国威発揚に利用するだろう。

一方、ウクライナへの軍事侵攻による犠牲は深刻だ。ロシア政府はロシア軍の死傷者数を公表していないが、ウクライナのゼレンスキー大統領は2月にウクライナ軍の死者が3万1000人と明らかにした際、ロシア軍はその6倍ほどと見積もった。

その後、英BBCは独自調査でロシア軍の死者を5万人以上と報道し、フランス政府は「死傷者50万人、うち死者15万人」(セジュルネ外相)とみている。

労働力不足やインフレも

既に国民に大きな犠牲を強いているにもかかわらず、戦争の実態はプーチン政権の統制によってメディアでは報道されないが、戦地に動員された兵士や家族を通じて現実は伝わっている。NGO「ロシア兵士の母の委員会」などが、兵士の過酷な待遇などを巡り、軍や政府を批判している。

また、刑務所の受刑者を兵士としてウクライナに動員したため、帰還した元受刑者による殺人事件が増えるなどウクライナ侵攻は世相を暗くしている。戦争の長期化による労働力不足や国債発行によるインフレなど、負の要素は増しており、5期目の不安材料となろう。

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