77回目の憲法記念日を迎えた。日本国憲法は1947年の施行から一度も改正されることなく、制定当時の条文が現在も維持されている。
かつては憲法改正そのものがタブー視され、議論に手を付けることすらできなかったが、近年では衆参両院で改憲に前向きな議員が議員定数の3分の2を超える状態が続き、世論調査でも改憲そのものに賛成する割合は増加している。国会は改憲論議を止めることなく、前に進める努力をすべきだ。
権威主義強める周辺国
現在、憲法審査会は最も多く同意を得られる可能性のある、緊急事態の際の議員任期延長を足掛かりに議論を進めようとしている。自民党をはじめ公明党、日本維新の会、国民民主党などの「改憲勢力」は、緊急事態条項に関する条文案の起草委員会設置を求めているが、立憲民主党、共産党などは反対。立民は「論点は多岐にわたる」「数年単位の時間をかけ、憲法全般を見渡した議論が必要」などと主張した。
立民は昨年まで、改憲を前提とせず憲法に関する議論を積極的に行う「論憲」の立場を強調していたが、今国会では自民の政治資金を巡る問題を理由に憲法審の幹事懇談会を欠席するなど議論の進展を妨げる動きが目立つ。公明や維新などが主張する立民抜きでの起草委設置を検討すべきだ。
改憲項目についても、緊急事態条項の創設や憲法9条の改正といった重要課題を後回しにすべきではない。国家には国民の生命と財産を守る責務がある。憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、周辺国は核兵器を保有し権威主義的動きを強めるなど、信頼すべき「平和を愛する諸国民」とは到底言えない。それだけでなくわが国には、首都直下地震や南海トラフ地震といった大規模災害のリスクもある。
3年以上にわたって国民生活に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルスへの対応では、諸外国が憲法などで規定された緊急事態条項に則(のっと)って対処する中、日本政府は緊急事態宣言を出し、国民に外出自粛などを呼び掛けるにとどまった。コロナ禍で多くの人が亡くなったが、それでも諸外国と比べて人口当たりの死者数は少ない。これはひとえに国民が政府の要請に応じ、マスクの着用やワクチン接種などを通じて協力したからにほかならない。
国民守る本気度示せ
少子高齢化と人口減少が進む日本では、外国人労働者や観光などで滞在する外国人の割合は今後も増えていくことが予想される。社会が多様化し、さまざまな文化的背景を持つ人が集まる中、コロナ禍の時のようなお願いベースの措置が緊急事態対応として今後も有効であり続ける保証はない。あらゆる有事を想定した法整備が急務である。
わが国は北朝鮮による拉致問題のような、極めて深刻な人権侵害すらいまだ解決できずにいる。憲法9条を改正し、自衛隊を国際社会に通用する軍隊に位置付けることで国民を守る本気度を示してほしい。