トップオピニオン社説【社説】米比軍事演習 日本も一層の対比関係強化を

【社説】米比軍事演習 日本も一層の対比関係強化を

中国が覇権主義的な動きを強める中、米国とフィリピンの定例合同軍事演習「バリカタン」が行われている。オーストラリア軍のほか、初めてフランス軍も参加。日本など14カ国もオブザーバーとして加わっている。インド太平洋地域の平和と安定に向け、日本もフィリピンとの関係を一層強化すべきだ。

島を奪還する訓練も

演習場所はフィリピン北部と西部が中心で、初めてフィリピンの領海外でも行われる。中国海警船との衝突が相次ぐフィリピン沿岸警備隊も初めて参加。南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島に近いパラワン州の島では、敵に占拠された島を奪還することを想定した訓練を実施する。南沙諸島は中比などが領有権を争っている。

中国海警船は南シナ海でフィリピン船に体当たりや放水を行い、フィリピン側に人的被害が出ている。さらに「親中派」とされたドゥテルテ前政権が、南シナ海問題を巡って中国と交わしたとされる「密約」の存在が明らかとなり、フィリピン側に不利な内容だとして批判が強まっている。

中国の強引な海洋進出は看過できない。フィリピンのマルコス政権は日米との連携を重視しており、4月には日米比と豪州による共同訓練が南シナ海で行われた。米国で開かれた初の日米比首脳会談では、海上保安機関の合同訓練を実施することなどで一致した。

中国の脅威にさらされるフィリピンの現状は、日本にとって決して人ごとではない。中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、海警船が尖閣沖で領海侵入を繰り返している。領海内では日本漁船に接近するなど危険な動きも見られる。

島を奪還する訓練は、2月から3月にかけて実施された日米共同訓練「アイアン・フィスト」でも行われた。米海兵隊と「日本版海兵隊」と呼ばれる陸上自衛隊の水陸機動団が、海上の輸送艦からホーバークラフト揚陸艇や水陸両用車で上陸する訓練を九州・沖縄で実施した。

共に米国の同盟国である日比は、東シナ海と南シナ海で力による一方的な現状変更を試みる中国にいかに対処するかという共通の課題を持つ。日本はフィリピンを英豪と同様に「準同盟国」と位置付けようとしている。中国を牽制(けんせい)する上で、日本は米国との同盟を基軸に同志国との関係も強化していく必要がある。日米比のほか、日米豪にインドを加えた「クアッド」、日米韓などの枠組みも重要だ。

日本とフィリピンは、中国が統一に向けて武力行使を排除しないとしている台湾を挟む位置にある。フィリピンは2023年、国内で米軍が巡回駐留できる拠点を5カ所から9カ所に増やすことで米国と合意した。新たな4拠点は、台湾に近い北部や南シナ海に接する西部に位置している。台湾有事に備えたものだとみていい。

中国への圧力強めよ

中国は日米とフィリピンの防衛協力強化を「アジア太平洋版NATO(北大西洋条約機構)」構築の試みだと批判し、神経をとがらせている。日米比は共同演習などで連携を深め、中国への圧力を強めるべきだ。

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