トップオピニオン社説【社説】自民3補選全敗 首相の改革姿勢に厳しい審判

【社説】自民3補選全敗 首相の改革姿勢に厳しい審判

衆院3補欠選挙の投開票の結果、自民党は候補者擁立ができなかった東京15区と長崎3区での敗北に加え、与野党対決となった島根1区でも敗れた。岸田文雄首相(総裁)が「火の玉となって」信頼回復に取り組むとした改革姿勢に厳しい審判が下された形だ。

消極的な自民独自案

不明のままになっている派閥パーティー収入不記載事件の真相解明への手順を新たに示さず、偏った党処分の見直しや政治資金規正法の改正などに向けて生ぬるい対応を続けていることへの国民の批判は強く、岸田首相への不信は増幅するばかりである。

自民が猛省すべきは、議席を有していた東京15区と長崎3区で候補者を立てられなかったことだ。国政選挙でありながら政権政党が選択肢を示せず民意を問わずに済ましたのは、責任の放棄である。東京15区では自民支持票の4割超が他候補に流れたとされるが、次回選挙で取り戻すのは容易であるまい。

自民が唯一候補者を立て事実上、立憲民主党候補者との一騎打ちとなった島根1区は「1議席死守」の最重要選挙区だった。小選挙区制導入以来、議席を維持してきた細田博之元衆院議長の「弔い選挙」だったが、逆風が強く首相は2度も現地入りし総力戦となった。

安倍派の資金絡みの影響で安倍派の元会長だった細田氏の政治実績をアピールできず、竹下登、青木幹雄両氏ら地元政治家の名前を共に出して「先人たちの志、魂をつなげていくのかどうかが問われている選挙」などと訴えた。だが有権者には受けず、無党派層の約7割が相手候補に流れた。

首相は補選について「私の政治に対する姿勢も評価の対象に入っている」との認識を示していた。安倍派、二階派による裏金還流事件の究明に取り組み、計39人を処分した。だが、誰がいつ還流を始め、一時ストップした後、誰の指示で再開したのかなどの実態解明には至っていない。宏池会会長だった首相自身や二階俊博元幹事長が不問に付された点も国民の理解が得られないままだ。

政治資金規正法の改正についても、他党から批判されてようやく独自案を示したが、政策活動費の透明化に消極的であるなど抜本的とは言い難い。有権者は、首相が本気でないことを見透かしていたのだ。自分の「政治に対する姿勢」が認められなかったことを重く受け止めねばならない。そして、これは全国の有権者の多くが同様に感じていると認識すべきである。

重要課題を忘れるな

首相は秋の総裁選で再選されるため、6月の通常国会会期末または8月にも召集する臨時国会で衆院の解散総選挙を断行するとの見方がある。だが、政治改革の姿勢に変化がなければ解散しても惨敗することは今回の補選で明らかになったと言える。

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