【社説】東京15区補選/今後の日本の政局全体を占う

衆院3補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)の選挙戦がたけなわである。
中でも東京都江東区を舞台とする東京15区(有権者数約43万人)は、来る7月に行われる東京都知事選、9月の自民党総裁選、その後に行われる可能性のある秋の解散総選挙を通じて日本の政局を左右する要素を含み、国民全体にとって目が離せない意味を持つ。

総選挙にらんだ争い

IR(統合型リゾート)汚職、公職選挙法違反と2代にわたって当選者の不祥事が続き、昨秋来の政治資金不記載問題も加わって国民の信頼を地に落としたままの自民党は、政権で連立を組む公明党と共にこの選挙区に候補者を擁立できなかった。だが、この2党を除いても総勢9人が立候補。選挙戦序盤、中盤の情勢調査では、立憲民主党、日本維新の会の各候補が1、2位で、これを日本保守党の候補が追うなどとなっている。

ところで、現職衆院議員は任期が残り1年余りであり、仮定のこととはいえ、今秋までに解散総選挙が行われる可能性がある。支持率低迷を続ける自民党は2021年の秋にも経験した通り、来る9月の党総裁選で独自にメディアを賑わせ、国民の注目を得ようとする戦術に余念がない。選挙の顔たる総裁を選んだ直後に解散してこそ、次期総選挙を有利に戦えるとの思惑が働きやすい。それで10月解散の可能性が高いのだ。

今回の補選当選者も現在会期中の通常国会に臨むのは6月末まで。勝とうが負けようが、半年後に行われるであろう再度の選挙での勝者こそが、25年初めからの150日間にわたる通常国会フル参加を含め、以後2、3年間を本格的に務める衆院議員となる。今回の補選に各党が候補者を立てて熱心に選挙戦を展開するのは、解散総選挙をにらみ、政党名と公約を売り始めた背景がある。

その意味で、東京1区で出馬の準備をしていた新興の参政党候補者が、急遽(きゅうきょ)東京15区に鞍(くら)替えした事実にも合点がいく。保守有権者からすると、政策面で岸田政権の大きな汚点となったのは昨年6月成立のLGBT理解増進法だ。同法審議の当時、既に唯一異議を唱えていた参政党だが、同法への反発を起点に昨秋結党した日本保守党と共にそれぞれ候補者を立てた。広範な女性の安全と人権に対して潜在的問題性が懸念される同法の廃止に向け、この度(たび)は票を互いに割ってでも、江東区の有権者は両党合わせた得票数をもって意思を示してほしい。

東京15区補選を巡っては、これを国政復帰の機会とし、あわよくば首相の座へのステップにしたいとする現職都知事の思惑も話題となっていた。だが学歴詐称問題が再燃して立候補できず、7月の都知事選再選すら危うい情勢である。

真剣に向き合いたい

自民党総裁選では初の女性総裁を選び、「新装自民党」となってこそ解散総選挙に臨めるとの声も根強い。

今後の日本の政局全体を占う選挙の火蓋(ひぶた)がこの4月に切られたのだと捉え、国民は心して真剣に政治に向き合わなければならない。

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