総務省は、個人情報の漏洩(ろうえい)問題に関してLINEヤフーに対し今年2度目の行政指導を行った。異例の対応である。現状では対策案が不十分との判断からだ。今では国民の8割以上が利用する通信アプリ「LINE」は、生活に欠かせないインフラの一つと言っても過言ではない。総務省の「韓国IT大手ネイバー社との関係見直し」という要求は些(いささ)か現実味に欠ける。重要なのは、LINEを利用する日本国民一人一人のリスクに対する意識である。
実質は韓国製アプリ
LINEが実は日本製のサービスでないことはご存じだろうか。LINEを一から開発し、今もなおその権力を握るのは、ネイバー社出身の愼重扈氏だ。しかもデータ管理の大半はネイバー社の子会社が担っており、実質は韓国製のアプリであると言える。
問題の発端は、2023年10月の旧LINEシステムへの不正アクセスだ。11月27日に公表されたLINEヤフーの調査結果によれば、ユーザーに関する個人データなど約44万件が漏洩した可能性がある。その後の調査で件数は約52万件に増えた。
契機となったのは、ネイバー社の委託先の従業員が使用するパソコンのマルウエア感染だ。ネイバー社と旧LINEは一部のシステムを共通化していたため、ネイバー社のシステムを介して不正アクセスを許してしまったのである。旧LINEの社会的責任の意識の不足、セキュリティー対策の軽視、そして管理体制のずさんさがあったと言わざるを得ない。
その状況から総務省は今年3月、行政指導に踏み込んだ。その後LINEヤフーが報告した再発防止策は不十分だとして、このほど再び指導を行った。1カ月余りで2度の実施は異例であり、総務省は「安全管理措置及び委託先管理が十分とは言い難い」と指摘。松本剛明総務相は「徹底した対応を期待したい」と強調した。
しかし、行政指導で要求された「韓国離れ」の実現は容易でない。LINEの開発は「LINEプラス(社員の大半がネイバー社の元技術者で、本社も韓国)」によるもので、実質的にはネイバーが担っている。しかも、データを管理しているのはネイバー社の100%子会社だ。つまり心臓部は韓国側に握られている。
今やネイバー社無しではLINEは成り立たないということだ。さらに、貴重な日本ユーザーの莫大(ばくだい)なデータを保持するLINEを韓国側が簡単に手放すとは到底思えない。
国民に説明と謝罪を
LINEヤフーはアプリを通じて、本問題を説明し謝罪することを検討すべきだ。国民がLINEを利用する際のリスクを承知でき、どう気を付ければよいか考えるきっかけになる。社会的責任を果たすというのは「腹を決める対応を取る」ことではないだろうか。
最も重要なのは、利用する日本国民一人一人の意識である。大切なメッセージや写真データなどを気軽にLINEで送信するのは注意が必要だ。企業による機密情報のやりとりは見直しも求められよう。