【社説】AUKUSと日本 重層的な国際連携構築を

米、英、オーストラリア3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」が、日本との協力を検討しているという。米英豪3カ国の国防相は共同声明で「志を同じくするパートナーを参加させることは、先進的な軍事能力の強化に役立つと確信している」と表明した。

力による一方的な現状変更を試みる中国の脅威に対処するため、日本はAUKUSとの連携を深めるべきだ。

先端軍事技術で協力模索

AUKUSは、豪州の原子力潜水艦配備に向けた協力を「第1の柱」、先端軍事技術の共同開発を「第2の柱」としている。豪州の原潜配備に関してはこれまで通り米英豪3カ国に限定し、第2の柱で日本との協力を模索する。極超音速兵器や人工知能(AI)などの分野で日本と連携し、インド太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中国に対抗する狙いがある。

AUKUSはインド太平洋の平和と安定維持のため、2021年9月に発足。米英が豪州に原潜関連技術を供与し、原潜建造を支援してきた。また、米豪は日本やインドと共に協力枠組み「クアッド」を構成。英国も最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中国が周辺国と領有権を争う南シナ海や太平洋に派遣するなど、この地域への関与を強めている。

日本は現在、日米韓や日米比の枠組みも重視している。韓国は尹錫悦政権発足後、対日関係が改善し、23年8月の日米韓首脳会談では、3カ国の安全保障協力を新たな高みに引き上げることで一致。中国や北朝鮮の脅威を念頭に、有事の際に日米韓で速やかに協議することも確認した。今月の日米比首脳会談では、海洋進出の動きを強める中国に「深刻な懸念」を表明し、海上保安機関による合同訓練を行うなど協力を強化することで合意した。

日本は米国との同盟を基軸に、英豪を「準同盟国」と位置付け、フィリピンとも同様の関係を目指している。重層的な国際連携を構築し、中国を牽制(けんせい)する必要がある。ただ岸田政権は米国の意向に応じようとするあまり、米国に引きずられているとの見方も出ている。日米同盟は重要だが、求められるのは日本が主体的な外交戦略を持った上で同盟を生かしていくことだ。

例えば「自由で開かれたインド太平洋」は、もともと安倍晋三元首相が提唱して米国が採用したものだ。中東から日本への原油や天然ガスの輸送路となっているインド太平洋では、中国が存在感を高めている。この地域で航行の自由や法の支配といった価値観を浸透させて中国の影響力を抑えることは、日本だけでなく米国の国益にもつながると言える。

スパイ防止法制定を急げ

AUKUSを巡る共同声明では、他国との協力で考慮する要素の一つとして「機密情報を保護する能力」を挙げている。日本では今国会で経済安全保障上の重要な情報を扱う資格者を政府が認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度創設法案の成立を目指しているが、これだけでは機密保護には不十分だ。スパイ防止法の制定も急ぐべきだ。

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