【社説】衆院3補選告示 首相の「解散」戦略に影響も

自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件発覚後、初の国政選挙となる衆院3補欠選挙が告示された。28日の投開票日に向け「政治とカネ」の問題を最大のテーマに論戦が展開される。ただ、自民党は東京15区と長崎3区で独自の候補者を擁立できなかった。事実上、与野党一騎打ちとなる島根1区の結果が、岸田文雄首相の衆院解散戦略に影響しよう。

裏金問題解明にフタ

3選挙区は全て自民の議席だった。東京15区は公選法違反事件で有罪が確定した柿沢未途前議員(自民離党)の議員辞職に伴い実施される。裏金問題の逆風により自民は公認候補や推薦を出すことができなかった。長崎3区も裏金事件を巡る谷川弥一前議員(自民離党)の辞職を受けて行われるが、独自候補の擁立には至らなかった。

このため、自民は2選挙区で不戦敗に追い込まれた。残る島根1区は、自民の細田博之前衆院議長の死去に伴うもので、自民新人と立憲民主の元職が激突する。保守王国での弔い選挙となり、通例であれば自民の楽勝とみられるが、今回は安倍派のパーティー資金の還流問題で細田氏が疑惑の一人とされているだけに苦戦が予想される。

両党は最重要選挙区と位置付けて総力戦を展開する。仮に自民が島根でも勝利できず、3戦全敗となった場合、岸田首相の求心力はさらに弱まり、再選を目指す自民総裁選にも大きな打撃となるのは確実である。「1勝死守」が政権の地盤沈下を防ぐ最低限のラインである。

首相に求めたいのは、政治資金パーティー収入不記載事件の真相究明を改めて積極的に行う意思を明確に示すことだ。自民執行部が先に行った調査では還流再開の経緯など肝心の点が不明なままだった。徹底した聞き取り調査を行うべきでないか。

首相は安倍派、二階派の39人の処分を公表した後に訪米した。バイデン米大統領との首脳会談の成果を踏まえ、帰国後は裏金問題にフタをしてしまい、政治資金規正法改正など今後に向けた対処策の策定に取り組む算段だったろう。

だが、離党勧告を受けた塩谷立・元安倍派座長が「事実誤認が多々あり、公平な審査を」と再審査請求を行ったように、事件の真相は十分に解明されていない。処分を受けた側からは「何を基準に処分を決定したのか」などの不満が出ている。ところが、党総務会は「(塩谷氏の処分は)党則にのっとっており、瑕疵(かし)はないという結論になった」と突き放した。

この問題の幕引きを急ぎ、説得力のある説明ができないのであれば、自民に対する国民の信頼はさらに失われることになり、補選には大きなマイナス要因となろう。連座制の導入など政治資金規正法改正の議論を深めて速やかに結論を得ることも肝要である。

苦戦の候補者に援護を

首相や党幹部が現地入りして応援するのも重要だろうが、政治改革特別委員会や衆参予算委員会の集中審議で真相を真摯(しんし)に説明しつつ政治改革への情熱をアピールしていくことも、候補者への援護射撃となることを忘れてはならない。

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