2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博まで残り1年を切った。しかし、機運は高まっていないのが現状だ。万博の成功に向け、魅力を向上させる情報発信に努める必要がある。
費用膨張や建設の遅れも
万博への期待が高まらないのは、どのようなイベントかイメージがわかないことが理由の一つだ。今回のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、どのような「未来社会」を示そうとしているのか十分に伝わってこない。
加えて、会場建設費の膨張や海外パビリオンの建設の遅れなどの問題が生じている。建設費は当初の1・9倍となる2350億円に膨れ上がった。国民の厳しい目が注がれているのも、万博開催の意義が周知されていないためだろう。万博の大きな見どころである海外パビリオンの中で参加国が建設する「タイプA」を巡っては、53カ国のうち既に着工しているのは14カ国にすぎず、17カ国はいまだに施工業者が決まっていないというから深刻だ。
昨年末の大阪府と大阪市の調査によれば、万博に行きたいという人は1年前の41・2%から33・8%に落ち込んだ。特に首都圏は19・5%と惨憺(さんたん)たる数字だ。首都圏の客を呼び込めないのであれば、海外からの誘客はさらに厳しいだろう。
海外パビリオンの具体的な展示物はまだほとんど公表されていないが、今秋には発表される見込みだ。開幕が近づくにつれ、徐々に万博の魅力が伝わる面もあろう。とはいえ、現在の機運の乏しさは見過ごせない。
万博開催にはもともと、地盤沈下が続く関西経済活性化の起爆剤とする狙いがあった。ただ、万博誘致が決まった18年11月と現在とでは国内外の情勢が大きく変化したことも事実だ。
21年の東京五輪は新型コロナウイルス禍のさなかに行われたが、万博はコロナ禍後に開催される。コロナ禍だけでなく、ロシアによるウクライナ侵略やイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘などを通じ、私たちは「いのち」の大切さに改めて向き合うこととなった。その意味で、万博のテーマは時宜を得ていると言える。テーマの重要性を効果的に発信できるよう工夫を凝らしてほしい。
万博に関しては、能登半島地震の被災地復興を優先すべきだとして中止を求める意見も出ている。だが、復興も万博も共に重要だ。関係者によれば、被災地では土木工事が中心で、万博のパビリオンなど建物の整備と作業内容は重複しない。万博開催に向け課題が山積していることは事実だが、誤解は解消しなければならない。
平和や文化発展に貢献を
今回の万博は半年の会期で2820万人の来場を想定している。八つの「シグネチャーパビリオン」では、生物学者の福岡伸一氏や映画監督の河瀬直美氏ら8人のプロデューサーによる展示で「いのち輝く未来社会」を体感できるという。
平均寿命が世界一の日本で行われる万博から「いのち」の大切さや可能性を発信することで、全人類の健康や福祉、さらには世界の平和や文化の発展にも貢献してほしい。