【社説】リニア開業延期 後任知事は早期開業に協力を

JR東海はリニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間について、目標としてきた2027年の開業を断念した。同社の丹羽俊介社長が「開業の遅れに直結する」と強調したのは、県の反対でいまだ着工できていない静岡工区だ。

川勝平太同県知事は失言問題で辞職する意向だが、辞職理由の一つに「リニア問題に区切りがついた」ことも挙げている。後任を決める選挙は早ければ5月中にも行われる見通しで、新知事には早期開業に向け協力する姿勢を見せてほしい。

県内自治体と食い違い

静岡工区は総延長25㌔の南アルプストンネルの一部だ。川勝氏は工事によって県内を流れる大井川の水量が減ることを懸念し、17年に反対を表明した。これを受け、JR東海は大井川の水量を確保するため、工事中に県外に流出する分と同量の水を大井川上流の田代ダムの取水を制限して補う案などを示し、流域自治体からは一定の評価を得ている。

県はのちにこの案を了承したが、南アルプスの生態系への影響や工事で発生する残土置き場についても問題視。大井川流域自治体だけでなく、残土置き場予定地を含む工区がある静岡市ともリニア問題への見解が食い違う場面が目立っていた。

しかし川勝氏は工事への反対姿勢を崩さず、JR東海との議論は膠着状態に陥っていた。「反対」には県内の自治体以上に川勝氏の意向が強く反映されていることは明らかだ。こうした姿勢に、自治体からは批判的な意見も出ていた。

リニア新幹線が完成すれば東京―大阪間を新幹線の半分ほどの約1時間で移動できるようになる。移動時間の短縮などによる経済効果は10兆円以上とも推計されており、27年の開業に向けて開発に取り組んできた近隣の自治体からは川勝氏の辞職表明を受けて工事の進展を期待する声も上がっている。

また、リニアには新幹線では不可能な時速500㌔を実現するため、物質を冷却することで電気抵抗がゼロになる「超電導」を利用する。この技術は次世代エネルギーとして期待されている核融合発電にも使われるもので、実用化に向け各国で開発が進められている。

核融合発電はエネルギー効率が高く、二酸化炭素を排出しないことに加えて、原子力発電よりも安全性が高いとされる。燃料となる重水素は海水から得ることができ、エネルギー安全保障の面でも国内で供給網を構築することが重要な意味を持つ。日本は技術的に優位に立つと言われているが、リニア新幹線の開業の遅れがエネルギー技術の発展の妨げになることがあってはならない。

山梨・長野にも遅れ

JR東海は既に着工している山梨、長野両県の工区についても、開業予定だった27年に工事完了が間に合わないことを明らかにした。いずれも31年の完了となる見込みで、工期の短縮は技術的にも難しい。

静岡工区においても、着工後に遅れが発生する可能性は否定できず、県とJR東海、国が早期開業を目指すことで一致し、協力することが不可欠だ。

spot_img
Google Translate »