【社説】自民党の処分 基準曖昧で真相解明もなし

自民党が派閥パーティー収入不記載事件に関係した安倍派と二階派の39人の処分を決めた。岸田文雄首相は党総裁として実態把握に努めたが、真相解明は進まず、処分の基準も曖昧だった。処分対象者から強い不満が出るのは当然で、けじめが付いたとは言い難い。

真相究明を引き続き行うとともに、再発防止策を講じなければならない。

首相への追及そらす

安倍派の座長を務めた塩谷立・元総務会長と参院トップだった世耕弘成前参院幹事長は、8段階ある処分のうち2番目に重い「離党勧告」だった。ほかは「党員資格の停止」「党の役職停止」「戒告」処分となった。

塩谷、世耕両氏は不記載に関し「知らなかった」としたが、世耕氏は離党届を提出し受理された。一方の塩谷氏は「事実に基づいて判断してもらいたい」とし、党規律規約に基づいて再審査の請求を行う見通しだ。だが、政治資金の還流を止められる重要ポストにいたことを考えれば決して重い処分ではない。

問題は、いつ誰が、なぜ始めたのかや、安倍派会長だった安倍晋三元首相が資金還流の中止を指示しながら、その後復活した経緯などの事実関係について一切明らかになっていないのに党執行部が処分を断行したことだ。不記載があった85人のうち、過去5年の総額が500万円以上に処分の対象を絞った理由も定かでない。

さらに疑問なのは、岸田派の会計責任者が3000万円余のパーティー収入不記載のため政治資金規正法違反で立件され有罪が確定したのに、岸田首相の処分に触れられていない点だ。この問題の発覚直後、岸田首相は10年ほど務めてきた派閥の会長を突然辞めた。責任追及を逃れるためだったのは明らかだ。

岸田首相は「政治信頼回復のため」との名目で「党の先頭に立って真相究明を行う」と繰り返し強調してきた。衆院の政治倫理審査会にも自ら出席して語り党内の調査を指揮してきた大きな理由は、自らへの追及の矛先をそらすことが念頭にあったためだろう。首相は処分に関して「政治責任、道義的責任について考えた」と語るが、自らの責任は全くないのか。

二階俊博元幹事長を処分対象から外したことも疑問だ。党所属議員最高の3526万円が不記載だったにもかかわらず、次期衆院選に出馬しないことを理由にお咎(とが)めなしとなった。任期満了であれば1年半も先の衆院選の不出馬表明により、政治責任を果たしたことになるというのは、自民党内の内輪の論理としか言いようがなく、国民の理解は得られまい。

特別委で究明継続を

政治への信頼回復のために最低限必要なのは、政治資金の透明性を確保するための政治資金規正法改正だ。収支報告書に虚偽の記載があった場合に国会議員も責任を負う「連座制」の導入や政党から議員に支給される「政策活動費」の公開義務付けなどの議論が必要である。

与野党は月内に設置する衆院特別委員会で、自民党不記載事件の真相究明を継続するとともに再発防止のための法改正を急ぐべきである。

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