【社説】川勝知事辞意 入庁式で差別的発言は最悪だ

静岡県の川勝平太知事が県庁に新規採用職員を迎える入庁式の訓示で職業差別と捉えられかねない発言をしたことから、知事を辞職する意向を明らかにした。これまでも問題発言でたびたび批判を受けており、任期途中の辞意表明は回復し難い信頼喪失を自覚したからだろう。来る知事選によって県政の仕切り直しを求めたい。

記者会見で撤回せず

公正公平を旨とする公務員として社会人生活をスタートしたばかりの新職員らに対し、入庁式で「野菜を売ったり、牛の世話をしたり、物を作ったりとかと違って、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い人たち」と知事が訓示したのでは、県のイメージさえ損ねかねないというものであろう。

川勝氏の問題の発言は、小売市場で野菜を売る職業に携わる県民や酪農に従事する県民への配慮に欠けるものだ。差別的と捉えられて批判が起こってもおかしくない。しかし、翌日の記者会見で川勝氏は「不適切な発言と思っていない」と述べ撤回しなかった。

これでは例えに挙げられた職業の人々に対して、ある種の偏見を広めて放置することになり、適切な対処とは言えない。撤回して謝罪すべきである。

「静岡県の内部統制に関する方針」は、筆頭に「内部統制の目的」として「県民の県行政に対する信頼の確保」を掲げ、そして「行政サービスの品質の確保」を謳(うた)っている。にもかかわらず、新たな門出に立つ新職員らの入庁式で差別的発言を行ったことは、問題発言の多い川勝氏にとっても信頼を損なう最悪の出来事だった。

野菜や物を売る小売業、牛など家畜を育てる畜産業に携わる人々は、市場競争に勝ち残るためにさまざまな創意工夫を凝らしながら収益を得て、県にも多額の税金を納めている。そのような納税者を見下したとも捉えられかねない言葉が発せられることに、知事の意識そのものへ疑いの目が向けられても仕方あるまい。

川勝氏は選挙など政治的対立の中でも、辛辣(しんらつ)な発言を行っている。2021年10月の参院静岡選挙区補欠選挙では、御殿場市長を辞職して出馬した候補者と争う浜松市出身の候補者を応援する演説の中で、浜松市と御殿場市を人口や食材の数などで比較し、御殿場市について「コシヒカリしかない」と述べ、地域差別と受け取られかねない発言をした。

県内の市町村に対して公平であるべき県知事として問題ある発言との批判が巻き起こり、静岡県議会は同年11月に川勝氏に対して知事辞職勧告決議を可決した。今回は選挙のような感情高ぶる政治対決の場ではなく、県議会でさらに強い追及が起こること必至だった。その機先を制する辞意表明により6月議会まで乗り切る構えとみられる。

数々の失言は多選の弊害

だが数々の失言や問題発言を行ってきた川勝氏が、4選を果たしたことも事実だ。

地方首長、とりわけ権限の強い知事の多選は地方政治の課題である。知事の問題発言が罷(まか)り通ってきたのも多選の弊害とみるべきだ。

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