トップオピニオン社説【社説】共同訓練 回数重ね対中抑止力向上を

【社説】共同訓練 回数重ね対中抑止力向上を

日本の安全を守る上で同盟国の米国や同志国との共同訓練の重要性が増している。沖縄県・尖閣諸島有事などを念頭に、訓練の回数を重ねて抑止力の向上を図るべきだ。

自衛隊参加が大幅増

今年も離島の防衛や奪還を想定した日米共同訓練「アイアン・フィスト」が2月から3月にかけて沖縄や九州で行われた。「日本版海兵隊」と呼ばれる陸上自衛隊の水陸機動団や、西太平洋の有事で最初に投入される在沖縄米海兵隊の第31海兵遠征部隊(31MEU)など日米合わせて約2000人が参加した。

沖縄では米軍キャンプ・ハンセンを中心に、ヘリコプターなどを使った着上陸や陸上戦闘、実弾射撃の訓練などを実施。水陸両用作戦能力の向上を図った。こうした演習によって、覇権主義的な動きを強める中国への抑止効果を高めることは安全保障上極めて重要だ。

水陸機動団は尖閣などの有事に即応できるよう、2018年3月に編成された。これまでに協力枠組み「クアッド」を形成する日米、オーストラリア、インドの4カ国や、日米とフランス3カ国の合同演習にも参加している。米国などとの2国間訓練はもとより、多国間の訓練も地域の平和と安全を守るには欠かせない。

自衛隊が23年に参加した多国間訓練は56回で、現在の運用体制になった06年比で18倍に増加したという。中国の軍備増強などに対応するものだが、こうした訓練を通じて重層的な国際連携を強化する必要がある。

中国は東・南シナ海で強引な海洋進出を行っている。尖閣周辺では中国海警船が領海に侵入し、日本漁船に接近するなどの危険な行動を繰り返している。南シナ海では岩礁を埋め立てて軍事拠点化を推し進めるだけでなく、最近は領有権を争うフィリピンの漁船に放水し、乗員を負傷させたり船体に深刻な損傷を与えたりしている。中国の無法ぶりは到底看過できない。

11日には米国で日米比首脳会談が開かれる。昨年6月にはフィリピンで海上保安庁と米比両国の沿岸警備隊による初の合同訓練が行われるなど、3カ国は中国に対処するための連携を深めている。中国の力による一方的な現状変更を容認することがあってはならない。

日比両国は共に米国の同盟国であり、日本はフィリピンとの「準同盟」関係構築を目指している。昨年11月の岸田文雄首相とマルコス大統領との会談では、自衛隊と比軍の往来に関する「円滑化協定(RAA)」締結に向けた交渉開始で一致した。締結されれば、豪州、英国に続いて3カ国目となる。日米比首脳会談では南シナ海で初の合同警戒監視活動を年内に実施することで合意する。一層の関係強化をアピールし、中国を牽制(けんせい)することが求められる。

法の支配を揺るがすな

日本は民主主義国として、法の支配を揺るがすことなく国際秩序の維持に尽力しなければならない。

地域の安定や繁栄と共に民主的価値観の浸透を目指す「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、米国などとの協力を強化すべきだ。

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