【社説】犯罪遺族給付金 同性同士は「配偶者」でない

法の解釈に無理のある上告審判決である。遺族に支払われる犯罪被害者給付金の支給対象に「同性パートナー」も含まれるというのだ。同居する同性同士の関係が夫婦同然というのでは、わが国の家族制度が混乱するのは避けられない。司法に対する国民の信頼を失わせる判断と言うほかない。

最高裁が解釈広げる判決

犯罪被害者等給付金支給法(犯給法)では、対象遺族は被害者の配偶者、子供、父母のほか、事実上の婚姻関係(事実婚)の相手などとなっている。これについて、最高裁第3小法廷は3月末、配偶者の解釈を広げ、同居していた同性も遺族に該当するとするのが相当だとした。

裁判所は最近、同性婚を容認する判決を相次いで下している。小法廷の判断も同性婚の法制化に道を開くもので、司法が伝統的な婚姻制度を守る責任を軽んじていることを改めて浮き彫りにしたと言える。この流れを止めるには、憲法を改正し、婚姻は一組の男女に限ることを明確にする「家族条項」を設ける以外ない。裁判所の急激な変化を見ると、これは急を要する。

訴えている男性(49)は10年前、20年以上同居していた同性のパートナー(当時52)を殺人事件で亡くしている。加害者は2人の共通の知人で、3人の愛憎のもつれで事件は起きた。加害者には、殺人罪で懲役14年の地裁判決が確定している。

男性は、被害者とは事実上の婚姻関係にあったと主張。愛知県公安委員会に遺族給付金の支給を申請した。同委員会は同性同士であることを理由に不支給としたが、男性は違法として県に処分取り消しを求めている。

名古屋地裁は4年前、「同性との共同生活が婚姻関係と同視できるという社会通念が形成されていたとは言えない」として、請求を棄却。名古屋高裁も同様に退けた。一、二審は妥当な判断を示したと言える。

だが、小法廷は給付制度の目的について「遺族らの精神的、経済的打撃を軽減し、権利を保護することだ」と指摘。その上で、事実婚関係も支給対象となっているのであれば、権利保護の必要性は「被害者と共同生活を営む者が異性か同性かで異ならない」との初判断を示し、請求を退けた二審判決を破棄。男性が被害者と本当に事実婚の関係にあったかを判断するため、審理を名古屋高裁に差し戻した。

これは、裁判官5人中4人の多数意見だ。しかし、裁判官出身の今崎幸彦裁判官は「多数意見には無理がある」と反対意見を付けている。同性同士の事実婚と単なる共同生活は「何が異なるのか」というのである。男女の関係を「婚姻」として保護するのは子供を生み育てるからだということを今こそ思い起こすべきではないか。

他の制度への波及を懸念

事実婚の相手を対象とする法制度は、遺族年金など200以上ある。小法廷は犯罪遺族給付金に限定した判断だとしているが、当然その他の社会保障制度にも波及すると考えるべきだ。「現時点で、広がりの大きさは予測の限りではなく、その意味からも多数意見には懸念を抱かざるを得ない」とした少数意見の方が説得力を持つのである。

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