小林製薬の紅麹を配合したサプリメントによる健康被害が広がっている。
摂取との関連が疑われる死者はこれまで5人に上っており、消費者の不安は強まっている。被害の拡大を防ぐとともに、速やかな原因究明と再発防止の徹底が求められる。
摂取で腎疾患など発症
紅麹配合のサプリを摂取した人が、腎疾患などを発症したため、大阪市は食品衛生法に基づき、小林製薬に機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」など3商品の回収を命令した。死亡事例に加え、サプリ摂取後の入院者は延べ100人以上に上る。食品の安全が脅かされる重大事態である。
紅麹の原料供給先は52社で、商社などを通じた販売先は170社を超える。ただ最終的な流通先は把握できておらず、今後の被害拡大が懸念される。厚生労働省は届け出があった企業名や商品名をホームページで公表しているが、分かりやすい情報発信でできる限り被害を抑えるべきだ。消費者も自身の健康を守るため、このような情報を活用してほしい。
厚労省は、サプリから青カビ由来の天然化合物「プベルル酸」が検出されたことを明らかにした。プベルル酸は抗生物質としての特性があり、抗マラリア効果を持つ一方、毒性が非常に高く、サプリには含まれない。
現時点で発生原因は分かっておらず、国立医薬品食品衛生研究所は小林製薬の過去3年分のサンプルを分析して解析を進める。厚労省と大阪市は工場で立ち入り検査を行う。小林製薬は国などと協力して原因解明を急ぎ、再発防止策を講じなければならない。
これまでの小林製薬の対応に遅れがあったことは否めない。最初に腎疾患の症状の訴えがあってから公表まで2カ月以上かかった。小林製薬は、自社の製品が健康被害を引き起こしたという確証を持てなかったためとしている。
しかし、食品は消費者の健康を左右する。ましてや健康効果をうたう機能性表示食品であれば、なおさら迅速な対応が求められたはずだ。公表の遅れで被害が拡大した恐れもある。
たとえ原因を特定できていない段階でも、自社製品が健康被害をもたらしている可能性がある以上、公表を急ぐべきだった。今後は遺族への補償や入院者、通院者への治療費負担、自主回収を進めている食品メーカーへの費用提供などに全力を挙げる必要がある。
他の製薬企業や食品メーカーも小林製薬の問題を他山の石とすべきだ。製品の安全性向上に不断の努力を傾けるとともに、万一健康被害が生じた場合に早急な対応ができるよう、危機管理体制を検証してほしい。
制度見直しで信頼回復を
林芳正官房長官は政府の関係閣僚会合で、5月末をめどに機能性表示食品制度の在り方を見直すよう消費者庁に指示した。これまでは企業の責任で効能を表示してきたが、今回のような問題が生じ、消費者の不安が広がっている以上、規制を強化することはやむを得ない。制度見直しを消費者の信頼回復につなげなければならない。