自民党の政治資金不記載問題では、通常国会中の衆参での政治倫理審査会を経て党内議員らの処分へと焦点が移っている。中でも国民の政治への信頼を失墜させた責任が最も問われるとして、安倍派幹部らが岸田文雄首相(党総裁)を含む党幹部の事情聴取を受け、4月上旬にも次期総選挙での「非公認」など重い処分を受けると言われる。
既に処分された側面も
だが東京地検特捜部の捜査では、首相自身が派閥会長であった岸田派の会計責任者も刑事立件されている。党内で処分する側と処分される側と区別するについては、安倍派幹部らの反発も強い。処分の在り方には国民の注視が必要だ。
安倍派では、昨年の東京地検特捜部による捜査の報道で幹部である「5人衆」の名前が各種メディアで躍った。社会的制裁の始まりである。
既に政権支持率の下落が危険水域にあって対応を急いだのか、捜査結果を待たずに岸田首相は安倍派所属の大臣4人、副大臣5人などを一斉に事実上更迭した。5人衆のうちこの処分に含まれなかった3人もそれぞれ国会や党幹部の職を辞した。5人衆は既に応分の処分を受けたと言える。
安倍派幹部らはその後も政倫審に完全公開で出席することとなった。その結果、派閥パーティー券販売のノルマ超過分のキックバック(還流)について、2022年4月に当時の安倍派会長である安倍晋三元首相が停止を指示した後、同8月に以降の対応を協議した幹部4人に責任を集約させるに至った。
4人のいずれも、8月の協議で還流復活の決定はしていない旨、証言をしたものの、その後に還流が復活した状況証拠をもって、4人に最も重い処分を行うべく、党幹部が今回、追加聴取を行った。
政権支持率と自民党支持率はいずれも底辺を極めている。国民には支持されていない岸田首相だが、今後4月10日のバイデン大統領との日米首脳会談をはじめとした国賓訪米に臨む。
バイデン氏からの招聘(しょうへい)に応じ、日本国を背負って最高の待遇による華の外交舞台に向かう岸田首相。片や、その訪米をもって政権支持率の下げ止まりが導かれ、ひと月後には敢行されるやもしれない解散総選挙に先の4人のうち3人の衆院議員は、比例復活もない党からの非公認という屈辱に甘んじて臨もうか、との極めて対照的な運命が待ち受ける。国民はこれをどう見るべきなのか。
国民は危機感を高めよ
24年は台湾総統選に始まり、最近終わったロシア大統領選を経て4月10日には韓国での総選挙が行われる。4月から時間をかけて投票が行われ、6月4日に開票されるグローバルサウスの雄インドの下院選挙も続く。諸外国での選挙のハイライトは11月の米大統領選だ。
日本の安全保障政策にとって重要な各国での選挙が続く中、国際情勢に戦略的なアンテナを十分に張っている様子も見受けられず、日本政治は内政に釘(くぎ)付けにされがちだ。主権者としての日本国民は危機感を高めて政治と向き合い、近づく解散総選挙にも臨まなければならない。