今年1月1日時点の公示地価は全国平均で前年比2・3%増と2008年のリーマン・ショック以来最大の上げ幅となり、3年連続で上昇した。
コロナ禍後のインバウンド(訪日客)増加や都市オフィスへの回帰、外国企業進出など海外の活力が上昇を後押しした半面、地方圏で約半数の地点が下落し、地方活性化にはなお課題を残している。
北海道で顕著な伸び
公示地価の全国平均上昇を牽引(けんいん)したのは、東京、名古屋、大阪の三大都市圏、札幌、仙台、広島、福岡の4市や県庁所在地のほか訪日客に人気の高い観光地や住宅地だ。その分、下落した地方での高齢化に伴う過疎化が進行していると言えよう。
岸田政権はデジタル田園都市国家構想を掲げて、人口減少、少子高齢化、過疎化、東京圏への一極集中、地域産業の空洞化などの課題を解決するとしているが、まだ有効な過疎化対策に至っていないようだ。
都市部と地方で二極化した経済状況の格差は、長らく公示地価に反映されているが、地方では新たに訪日客や海外企業の進出が上昇の大きな要因になっている。交通や暮らしの利便性の良い都市への集積がコロナ禍の後に再び高まり、また訪日客が増えて観光リゾート地での宿泊やレジャーの需要が高まることにより、取り残された過疎地域と明暗を分けることになる。
北海道ではパウダースノーと呼ばれるスキーやスノーボードに適した世界最高レベルの雪質の降雪を求めて、富裕層の外国人客が集まるようになった。住宅地の上昇率の上位10位には北海道から富良野市など7地点も入った。上昇率3位には沖縄県宮古島の地点が入ったが、島外からの不動産需要が高まっており、投資目的の不動産購入も指摘されている。
商業地でも北海道千歳市の3地点のほか北海道北広島市、札幌市の計5地点が入り、半数を占めた。北海道の地価がこのような上昇を遂げることは、国内観光をアピールしていた一昔前には予想できなかったことだ。
この他、夏は日本アルプスの登山、冬はスキーで知られる長野県白馬村、食べ歩きで人気のある大阪・道頓堀など、訪日客の旺盛な消費力がバネとなり地価を跳ね上げた。商業地のトップと2位は共に熊本県で、半導体世界最大手の台湾企業・台湾積体電路製造(TSMC)の工場周辺にある大津町と菊陽町の地点だ。熊本市のベッドタウンとして人口増加率が高かったところに、台湾の大企業が進出して新たな雇用を生み、地価の上昇を招いている。
投機的な売買も心配
ただ、海外からの人、モノによって地価が上昇し、資材高と相まって諸物価に反映する構図が顕著となることは、円安が続く中、海外投資家の投機的な不動産売買などでバブル現象をもたらさないか心配だ。
春闘の賃上げは相殺され、金利も徐々に上昇するとみられることから住宅ローンの負担も増えることになる。必ずしも国民一般に優しい環境とは言えない。4万円を超えた日経平均株価と共に不動産バブルの再来には注意を促したい。





