【社説】内閣支持率低迷 政権は抜本的な出直しを

3月度のNHK世論調査で岸田内閣の支持率は2月度と変わらず25%と発表され、前後する報道各社のものと合わせ、低迷が継続する兆候にある。加えて昨年末以降は、自民党支持率の低落も顕著であり、自公連立を与党とした岸田政権は今日、2021年の衆院選以降で国民の信頼を最も欠き、期待を裏切り、しかもそれらが数カ月も継続している状況にある。国民の声に対する「聞く力」を発揮するなど抜本的な刷新が必要だ。

公約違反が招いた不信

日経平均株価は3月22日に終値4万0888円43銭と史上最高値を記録した。また、連合は今年の春闘について33年ぶりの賃上げ率5%超(771社平均)であることを公表した。経済界の明るいニュースを差し引いての政権不信はあまりに際立つ。

NHKの世論調査では、政党支持率における「支持政党なし」が、与党の公明党を含めた各党をはるかに超え、自民支持と拮抗する傾向が定着していたが、昨年5月以降はその無党派層が自民支持率を下回ることがなくなった。3月度の調査では42%(自民は29%)と今年に入っての引き離しも顕著だ。

自民不支持を示すデータとして最近、昨年末時点で党員数が前年より3万人以上減り、109万人余りになったことが発表された。だが、その原因を昨年末以来の政治資金不記載問題に見いだそうとする分析が党内からも疑問視された。自民への風当たりの強さ、その結果としての党員減少は既に昨年夏以降、自民の政治家らに如実に感じられていたからである。

昨年5月といえば、内閣支持率アップにはもってこいの先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の議長国開催を果たす一方、党内の反対意見を押し退(の)け、岸田文雄首相(党総裁)率いる自民がLGBT理解増進法案を国会に提出。党内保守派議員らによる歯止めも効かぬまま結局6月、同法は成立した。

理念法にすぎないから等々の弁明も虚(むな)しく、続く7月には経済産業省のトランスジェンダー職員に女子トイレ使用を制限するのは違法とする最高裁判決、また10月には戸籍上の性別変更に生殖能力を失わせる手術を義務付けるのは違憲とする最高裁判決がそれぞれ下された。いずれの判決にも同法成立の影響が記されていったのである。

国民のコンセンサスなく、そもそも21年衆院選前の党首討論で岸田首相自ら推進しないと公言した同法成立を怒り、その後の経過と並行して結党に駒を進めたのが日本保守党である。同党に期待する3万人に自民からの3万人の乗り換えが上乗せされ、現在の党員数6万人を数えているかの如(ごと)くである。4月28日の衆院東京15区補選には初めて候補を擁立するという。

不支持政権延命は不幸

支持率の落ち込んだ政権がなおも延命することは、国民全体にとって政治的不幸が続くことを意味する。

自民は派閥の力学を失い、リーダー交代の自浄能力をも失った現状だ。総選挙が近づくわけでもなく、選挙の顔をすげ替えねばとの危機感も働かない。抜本的な刷新を伴う出直しが必要だというほかない。

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