トップオピニオン社説【社説】露大統領選挙 独裁的な政権の長期化は脅威

【社説】露大統領選挙 独裁的な政権の長期化は脅威

ロシア大統領選挙はプーチン大統領が9割近い圧倒的得票率で通算5選を決めた。ウクライナ侵略を批判する政治家の立候補は許されず、拘束された反体制派指導者ナワリヌイ氏は獄死し、メディアがプーチン氏の宣伝を流し続ける中で選挙は行われた。有権者に自由な選択があったとは見えない。

プーチン氏が5選決める

5選を果たしたプーチン氏は6年の任期を得た。次回の2030年大統領選に出馬し当選すれば、36年まで在職する可能性がある。プーチン氏は、20年の憲法改正に伴い過去の大統領任期が白紙化されたことによって今回の選挙に臨んだ。政権を掌握し続けるため、大統領経験者の任期を「リセット」する例外的な条項を加えた結果だ。

既に大統領を通算4期20年務めたプーチン氏の下で、ロシアは民主主義から遠い国となっていた。ウクライナ侵略に踏み切ってからは、もはや欧米やわが国にとって敵対的な国となっている。この先も大統領を続けるほど独裁化した長期政権となり、国際社会に新たな脅威を呼びかねない。

当選を決めたプーチン氏は、ウクライナ南部クリミア半島の併合を強行してから10年となる記念イベントで、ウクライナへの本格的軍事侵攻後に併合した同国東・南部4州についても統合を推進していく意思を表明した。これら軍を進めたウクライナ領内でも、ロシア大統領選への投票を強いたことは、実効支配を狙った暴挙である。

国際法を破り、軍事力で他国の領土を切り取る主権侵害は到底許されるものではない。だが、露骨な侵略を「特別軍事作戦」と呼び、反戦運動は徹底して弾圧し、政権に批判的な要人の怪死が相次いで起きているロシア国内では、政権批判はこれまで以上に抑えられている。

今回の大統領選を前に、選挙で政権に脅威となるとみられる候補者や政治勢力に対して弾圧や排除が繰り返された。政策的な対立軸を持つ野党が存在できなくなることが懸念される。

プーチン氏が演説に立ったクリミア併合10年の記念イベントには、選挙で敗れたばかりのロシア共産党、自由民主党、政党「新しい人々」などの大統領候補者3人も同席した。政権寄り野党からの立候補を認める一方、ウクライナへの軍事侵攻を批判した元下院議員には立候補を認めないなど公正な選挙とは言えないだろう。

残念なことに、投票結果はロシア国内からプーチン氏の強権体制を変革する可能性が低いことを示した。ウクライナの状況は危機的であり、欧米など国際社会が歩調を合わせてウクライナを支援していかなければ、プーチン氏5期目の任期中にウクライナ東・南部の統合が進んでしまう。

歯止めかける決意固めよ

プーチン氏の5選は予想に反するものではなかったが、欧州や極東などロシアに近接する地域の安全保障環境は悪化の一途をたどるとみるべきだ。わが国は北方領土をロシアに不法占拠されている。力による現状変更を推進中のロシアに歯止めをかける決意を、欧米の民主主義諸国と共に固める必要がある。

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