北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県)間が延伸開業した。首都圏と石川県南部、福井県が一本に繋(つな)がった。能登半島地震で被害を受けた北陸の復興の起爆剤となることが期待される一方、被害の最も大きかった能登の復興に結び付けるにはなお時間と工夫が必要だ。
「北陸応援割」もスタート
延伸区間は約125㌔。石川県内に小松、加賀温泉の2駅、福井県内は芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の4駅が新たに設けられた。東京―福井間は36分短縮され最速で2時間51分となり、東京―敦賀間は3時間8分で結ばれる。
区間内最速の「かがやき」、停車駅の多い「はくたか」、富山・金沢と敦賀を結ぶ「つるぎ」の計81本が延伸区間を走る。金沢―大阪間を結んでいた在来特急「サンダーバード」は、敦賀以北の運行を終了した。
福井県、石川県南部加賀地方への首都圏、そして他の信越地方からのアクセスが向上し、観光需要が高まることが期待され、ビジネス交流の活発化と共に経済効果は高い。平成27年3月に長野―金沢間が延伸開業して以降、金沢市は観光業を中心に好景気が続いた。新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)での休止期間はあったが、新幹線効果の大きさは実証されており、加賀温泉郷と言われる地域や福井県でも同様の効果が期待されている。
能登半島地震からの復興を目的とした「北陸応援割」も同時にスタートした。大型連休前の4月26日までの期間、石川、富山、福井、新潟4県への旅行代金が1泊2万円を上限に最大50%が割引される。能登半島地震で宿泊客のキャンセルが相次いだこれら地方の観光業には、復活への弾みとなるだろう。
ただ、キャンペーン期間中の特需で終わらせてはならない。福井県は東尋坊や曹洞宗の本山で禅の修行場として知られる永平寺などが、これまでの人気スポットであった。新幹線の開業に合わせて、勝山市の福井県立恐竜博物館をリニューアルし、「恐竜県・福井」を全国にアピールしている。息の長い魅力の発信に力を注ぐ必要がある。
地震被害の最も深刻な能登半島は、観光業を再開できないばかりか、ボランティアの受け入れ態勢も整っていない。新たに新幹線の停車駅が設けられた加賀の温泉には能登からの2次避難者もいる。観光客の増加が避難の妨げになってはならない。
北陸応援割について、能登地方は時期をずらして補助率を70%にすることが検討されているが、まずはインフラの復旧、倒壊した家屋の解体、瓦礫(がれき)処理、仮設住宅の建設を急がないといけない。その上で新幹線延伸や北陸応援割の効果を復興に繋げるには、ボランティアツーリズムの推奨や「ボランティア割」の導入など工夫が求められる。
新大阪への早期延伸を
今回の延伸で大阪など関西圏の北陸へのアクセスが向上したかについては疑問も残る。かなりの本数が運行していたサンダーバードは、敦賀で乗り換えが必要になるからだ。北陸と関西の結び付きを弱めないためには、できるだけ早い新大阪への延伸開業が望まれる。ルート設定や用地取得を急ぐべきだ。