【社説】ミャンマー 民主化望む民意は変えられぬ

ミャンマー国軍が徴兵制を実施すると発表した。これを受け、国外への「脱出」を希望する若者らが増えている。民主化を後退させた国軍に対する国民の強い不満を示すものだと言える。

徴兵制実施で混乱生じる

国軍は2021年2月、クーデターによって民主派政権を倒し、抵抗勢力を弾圧してきた。しかし、23年10月以降は少数民族の攻勢を受けて地方で拠点を奪われるなど劣勢となり、多数の兵士が投降して士気の低下も指摘されている。こうした情勢が徴兵制実施の背景にある。

徴兵制は18歳以上が対象で、医師など専門職以外では男性は35歳、女性は27歳まで。兵役義務は通常2~3年で、非常事態の場合は5年となる。10年に当時の軍政下で導入されたが、これまで実施されてこなかった。

国民の拒否感は強く、ミャンマーでは混乱が生じている。隣国タイへのビザ(査証)を求める人が急増し、中部の第2の都市マンダレーでは、旅券(パスポート)事務所に市民が殺到して2人が死亡する事故も発生した。国軍兵士の間でも国民を攻撃することへの嫌悪感が広がる中、国民が徴兵制に反発するのは当然だ。

国軍は空爆などで多くの国民を死傷させている。情報筋によると、23年10月以降、国軍と少数民族武装勢力との戦闘で民間人500人以上の死亡が確認されている。23年全体で国軍に殺害された民間人は1600人以上に上り、前年より約300人増えた。また、政治的理由で約2万人が拘束されている。国内避難民は24年中に300万人に達するという。こうした虐殺や弾圧は、どのような理由があっても正当化できない。

国軍トップのミンアウンフライン総司令官は24年1月、声明で「選挙を実施して選出された政府に役割を引き継ぐ」と表明したが、武装勢力との戦闘のため、先行きは不透明だという。しかし民主化への道筋を明示しない限り、武装勢力との和平実現は難しいのではないか。

クーデター後に刑務所に収監されている民主化指導者アウンサンスーチー氏の健康状態も気掛かりだ。スーチー氏は汚職などを理由に刑期が計33年となる有罪判決を受け、その後減刑されたものの、27年の刑期が残っている。23年には持病の歯周病が悪化して刑務所外の医師の診察を求めたが、国軍は認めず、一時は歩けなくなるまで容体が悪化したという。このような人権侵害は言語道断だ。スーチー氏は78歳という高齢であり、国際社会はスーチー氏の釈放を強く迫る必要がある。

ASEANは積極関与を

クーデター前年の20年11月の総選挙で、スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)は、改選476議席のうち396議席を制する地滑り的勝利を収めた。

これが民意であることを国軍は受け入れるべきだ。クーデターでスーチー氏の自由を奪っても、民主化を望む国民の意思を変えることはできない。国際社会、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)は、内政不干渉の原則にとらわれることなく、ミャンマー情勢に積極的に関与し、国軍の虐殺や弾圧をやめさせなければならない。

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