能登半島地震の発生から2カ月が経過した。水道、道路などのインフラの復旧は遅れながらも徐々に進んでいる。これからは復興を見据えた生業の再建を急がねばならない。
国が伝統産業復旧を支援
復旧の遅れは、日本海に長く突き出た能登半島の地形によるものが大きいが、何よりマグニチュード(M)7・6という阪神・淡路大震災、熊本地震のM7・3を超える地震の規模の大きさによる。地盤隆起によって海岸線が200㍍近くも海側に伸び、道路は至る所で波打ち、崖崩れで寸断された。
石川県内の住宅被害は7万5000棟近くに上っている。県は3月末までに4600戸の仮設住宅の着工を予定しているが、まだ300戸ほどしか完成しておらず、6200人以上が避難生活を送っている。
これらインフラの復旧を急ぐ一方で、生業の再建が急務である。能登では地域の結び付きが密接で、人々の地元への愛着は強い。地元に住み続けたいという人は多いが、雇用の確保や生業の再建がなければ、それも難しくなる。いったん地元から離れた場所に避難した人も同様で、住環境が整っても帰ることを躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ないだろう。
特に輪島市や珠洲市、能登町など奥能登地域は、高齢化率が50%近い。過疎化が進み、地域共同体を維持していけるかという不安のある中、今回の地震が追い打ちを掛けた。
今後、国や県など公的な支援によって復旧しても、人口減少の流れを食い止めることは容易ではない。東日本大震災後、岩手県、福島県では若い世代が地元を離れ、全国平均1%に対して10%も人口が減っている。能登が東北地方以上の厳しい状況に直面することも考えられる。
若い世代が地元に残らないのは、産業・雇用がないことが最大の理由だ。地元産業を守ることは、若い人たちを地元に繋(つな)ぎ止める最大のポイントである。生業の再建は、地元に根を下ろした中高年だけでなく若い世代にも切実な課題だ。
水産、観光、伝統工芸などが能登の基幹産業だ。これらをどう速やかに再建していくかが重要だ。今回の地震で県内69漁港のうち60港が地盤隆起や製氷所など水産施設の損壊の被害を受けた。輪島を視察に訪れた岸田文雄首相は、漁に出られない漁業者に協力してもらうことで、生活を支えながら漁場の環境を回復する方針を明らかにした。能登の魚が市場に出回ることが、復興を後押しする。
首相は復興に向け、2023年度予算の予備費から1000億円規模の追加支出を表明。これを生業再建に充てたい。また、輪島塗など伝統産業の復旧のため15億円の補助金を出し、臨時の作業場となる仮設工房を全額国費で開設するなどの支援策を発表。都市再生機構(UR)による伴走型の支援を行う意向を表明した。「朝市」再生を能登復興の象徴としたい。
日本の地方の将来占う
能登半島地震は、高齢化、過疎化など日本の地方の抱える脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。能登が恒久的な復興を果たすことができるかどうかは、地方の将来を占うものになる。