東京株式市場で日経平均株価が34年2カ月ぶりに史上最高値を更新し続けている。好調な企業業績を背景に、米国に釣られる形で半導体関連企業などの株価が相場を牽引(けんいん)する。
東証の企業への資本効率化要請も海外投資家から好感されて上昇相場となっているが、この上昇基調の持続へ国民の所得向上を伴う経済の好循環を着実に実現していきたい。
政策の誤りで長期低迷
約34年ぶりの最高値更新に、証券・経済界は日本企業の収益力強化や資本効率化の向上など統治改革の進展が海外で評価されたとして自信を深め、年内に4万円超の声も上がる。
市場関係者の間では、株価の急ピッチな上昇に調整局面はあっても、年末に向けて再び高値を目指す可能性があるとの見方が少なくない。
その大きな理由は、バブル期とは日本経済の牽引役が一変しているからだ。時価総額の上位ランキングで、1989年末は土地の高騰もあって取引を仲介する銀行がトップ10に六つランクインした。
しかし直近の顔触れは、トヨタ自動車を筆頭に、ソニーグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ファーストリテイリング、NTTなど多様化し、グローバルに活躍して業績が堅調な企業が並ぶ。バランスが取れて安定感があり、長期的には急ピッチな株高もバブルではないとの見方である。
それにしても、約34年の低迷は長過ぎた。専門家によれば、この間、名目GDP(国内総生産)の伸びは、日本がデフレでほぼゼロ成長だったのに対し米国は3%を超える成長を遂げ、米国株は14倍超と飛躍的に伸びた。この落差を招いたいわゆる「失われた30年」には、財政・金融当局による政策の誤りの影響も無視できない。
89年5月からの日銀の段階的利上げによる過度な引き締めとその後の利下げの遅れはバブル崩壊の一因となった。バブル崩壊後も、財政再建を急ぐ名目で財務省(大蔵省時代を含む)によって97年、2014年、19年と消費税増税がたびたび実施され、GDPが上がらない政策が採られた。
もちろん、この間には08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災といった大きな事件や災害のほか、不良債権処理に追われた銀行の「貸しはがし」によって、企業が設備投資を控え雇用を切るなどの事態に追い込まれてデフレ色を深めたこともある。だが政策の誤りも回復を遅らせたことは明らかで、当局は肝に銘じるべきであろう。
企業は積極的な賃上げを
さて、今後である。最高値更新は「通過点」として4万円超とさらに上昇するのかどうか。市場に一段高には新規の材料が必要との声もあるほか、物価高で個人消費は盛り上がりを欠き、かつてのような好景気の実感が広がっていないのも事実だ。
株価が今後も上昇基調をたどり、それが景気回復の恩恵として行き渡るには、賃上げが持続し消費・投資の好循環が実現することが肝要である。政府・日銀には物価高を招く過度な円安への注意、企業には積極的な賃上げ、設備投資を望みたい。