【社説】処理水放出半年 容認できぬ中国の経済的威圧

東京電力福島第1原発の処理水放出開始から半年が過ぎた。放出に反対する中国は、日本産水産物の輸入を全面停止したままだ。科学的根拠に基づかない禁輸措置は、日本たたきの「外交カード」にほかならず、中国による経済的威圧は断じて容認できない。

IAEAが安全性を確認

東電は2023年8月24日、処理水の海洋放出を始めた。処理水を保管するタンクは1000基以上に達し、24年2月以降に満杯となる見通しだった。廃炉作業のため、これ以上タンクを増やすことはできず、放出に踏み切った。

処理水は、11年3月の福島第1原発事故で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の冷却などで生じた汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理し、大半の放射性物質を除去した水。水素の一種のトリチウムは取り除けず、国の安全基準の40分の1(1㍑当たり1500●)未満になるように大量の海水で薄め、約1㌔沖合から海へ放出している。

 国際原子力機関(IAEA)は23年7月、放出計画について「国際的な安全基準に整合的である」と結論付けた包括報告書を公表した。放出後もモニタリングに関与し、安全性を確認している。このような点を踏まえても、中国の禁輸措置は極めて不当だ。

 日本では23年の農林水産物と食品の輸出額(速報値)が前年比2・9%増の1兆4547億円と11年連続で過去最高を更新した。しかし中国向け水産物は、禁輸措置の影響で29・9%減の610億円にとどまった。対中輸出の依存度が高かったホタテ貝(生鮮・冷蔵・冷凍等)は24・4%減と落ち込んだ。もっともホタテ輸出は、米国やベトナム向けが大幅に増加しており、中国を経由しないルートの開拓が進みつつある。今後も輸出先の多角化を図りたい。

一方、中国でも水産物の消費が落ち込み、価格下落が続いている。中国人が経営する日本料理店も客数や売り上げが減少したという。日本産水産物の危険性を喧伝(けんでん)することが、自国の国民を苦しめる結果となっているのではないか。

ただ海洋放出を巡っては、安全性への信頼を損なうような事態も生じている。23年10月にはALPSの配管洗浄で作業員の身体汚染が生じ、24年2月には浄化装置から1・5㌧の汚染水が漏れた。

東電は原発事故を引き起こし、国民の原発への不信感を高めた。このことが日本の国益をどれほど損なっているか自覚すべきだ。処理水放出の期間は約30年に及ぶとされるが、安全性への不安が強まれば放出作業にも支障が生じかねない。福島の復興に向け、特に地元住民の信頼を揺るがしてはならない。

WTOへの提訴検討を

日中両政府は1月、処理水放出について担当者レベルの協議を行った。

この協議は23年11月の日中首脳会談での合意を受けたものだが、話し合いで中国が禁輸を撤回するとは思えない。日本は中国の不当な措置に対し、世界貿易機関(WTO)への提訴も検討すべきだ。

 ●=ベクレル

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