H2Aに次ぐ日本の主力ロケット「H3」2号機の打ち上げが成功した。昨年の1号機での失敗を見事に乗り越えた宇宙航空研究開発機構(JAXA)や三菱重工業など関係者に敬意を表したい。
1年遅れとなったが、H3の運用はこれからが本番。関係者には引き続き技術や利便性の向上に努め、H3が国際競争の舞台で大いなる活躍をするよう期待したい。
1号機の失敗乗り越える
開発責任者の岡田匡史プロジェクトマネジャーは今回の打ち上げを「満点」と評価したが、決して慢心ではない。それは自らも含め、1年間、失敗の原因究明から対策に携わった全ての関係者への労(ねぎら)いもあるだろう。本人にとっては、またの失敗は許されないというプレッシャーや、地球観測衛星「だいち4号」の2号機への搭載が1号機の失敗で見送りになった悔しさもあったはずである。
岡田氏は今回の打ち上げ前、この1年間を「最初の4カ月は出口が見えず、非常にしんどかった」と振り返った。1号機のトラブルがH2Aで実績のあった第2エンジンで起きたからだ。
相次ぐ不具合の末に完成させた新型の第1エンジン「LE―9」が予定通り燃焼を終え、喜んだ直後に、第2エンジンでのまさかの失敗で「天国から地獄へ突き落とされた」のである。失敗は第2エンジンの電気系統で過大な電流が検知され、着火しなかったためと分かり、JAXAは原因を三つに絞り込み、全てについて絶縁の徹底などの対策を講じて成功につなげた。
ただ、満点の打ち上げに喜んでばかりもいられない。岡田氏が会見で「これからが勝負。宇宙の軌道というよりも事業の軌道に乗せられるようにしっかりと育てていきたい」と述べたように、見据えるのは今後20年に及ぶ国際競争の舞台での成功だからで、今回はそのスタートラインに立ったという段階である。
H3は1段目にLE―9を導入して推力を増強。固体燃料ロケットを追加して大小さまざまな衛星の打ち上げに対応する。特に低コスト化を図り、1回当たりの打ち上げ費用を、最も抑えたケースでH2Aの半額の約50億円にすることを目指す。
開発完了後、技術移転を受け製造や打ち上げサービスを担う三菱重工は、費用低減のため、3Dプリンターによる一体成型で部品数を減らしたり、割安な車載用電子部品を積極活用したりした。さらなる低減へ民間受注の獲得で年6回以上の打ち上げを行いたい考えである。
着実に成功重ねたい
既に米衛星通信サービス大手から受注を受けているが、拡大は容易でない。米欧勢の存在である。中でも米スペースXの「ファルコン9」は、機体の一部再利用や複数の射場活用で低価格を実現し独り勝ちの状況にあるという。欧州も新型の「アリアン6」の実用化を急いでいる。
まずは着実に成功を重ね信頼性の向上に努めたい。新型補給機「HTV―X」を搭載して国際宇宙ステーションへ打ち上げることも予定され、米国主導の月探査計画「アルテミス計画」への貢献も期待されている。今後の活躍が楽しみである。