【社説】ナワリヌイ氏死亡 プーチン政権への疑念消えぬ

ロシア極北の刑務所に収監されていた反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡した。プーチン政権による反政権活動への統制強化を象徴するニュースだと言えよう。

当局「散歩後に意識失う」

当局の発表によると、ナワリヌイ氏は刑務所で「散歩後に気分が悪くなり、すぐ意識を失った」。蘇生措置が尽くされたものの、その場で救急医が死亡確認したと説明された。

ナワリヌイ氏はプーチン政権批判の急先鋒(きゅうせんぽう)で、ウクライナ侵略にも反対していた。2021年1月に経済事件で収監され、23年8月には「過激派組織の創設」などの罪で新たに禁錮19年を言い渡されて事実上の政治犯として獄中にあった。

その死に当局の関与があったかは不明だ。ただナワリヌイ氏は20年8月、軍用神経剤ノビチョク系とされる物質による毒殺未遂に遭っている。ノビチョクは化学兵器であり、プーチン政権が関わった疑いが濃厚だ。

当局はナワリヌイ氏の遺族に「突然死症候群」が死因だと伝えたが、遺体は引き渡していない。これでは政権への不信感を高めるだけだ。支持者らは「殺人」と主張している。ロシアでは追悼の動きが広がり、各地で400人以上が拘束された。

ロシアでは、プーチン大統領の通算5選が確実視される大統領選を3月中旬に控えている。中央選管は、ウクライナ侵略に反対する独立系のナジェジディン元下院議員の候補者登録を認めなかった。ナワリヌイ氏もかつて出馬を却下されており、大統領選はプーチン氏への信任投票の色合いを濃くしている。だが政敵を排除して当選しても、その正統性には疑問符が付く。民主主義の価値観を共有する西側諸国の信頼は得られまい。

日本を含む先進7カ国(G7)は、ナワリヌイ氏の暗殺未遂や拘束を非難してきたが、ロシアは聞く耳を持たない。プーチン政権が国内で戦争に反対する動きを抑え込めば、ウクライナ侵略もすぐには終わらないだろう。長期戦に持ち込んで西側諸国のウクライナへの「支援疲れ」を待つ狙いも透けて見える。砲弾を提供した北朝鮮やドローンを供与したイランのように、ロシアに協力する国も存在する。

そもそもロシアはウクライナ南部クリミア半島を併合した14年3月以降、22年2月に侵略を開始するまで東部の親露派支配地域に軍事介入していた。ウクライナへの執着は尋常でない。プーチン政権がナワリヌイ氏に直接手を下したかどうかは別としても、モスクワ東方の刑務所に収監していたナワリヌイ氏を23年12月に極北の刑務所に移送して弾圧を強化したことは、プーチン氏の大統領選圧勝と戦争継続への決意を示したものとみることもできる。

日本は民主陣営と連携を

ロシアが力による一方的な現状変更を進めているのは、ウクライナだけではない。ロシアは北方領土の不法占拠を続けており、20年7月には領土割譲を禁じる憲法改正を行うなど強硬な姿勢を崩そうとしない。日本は米国をはじめとする民主主義陣営との安全保障協力を進めるなど連携を強化してロシアと対峙する必要がある。

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